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2022.08.09 08:36

「勝ち負けじゃない」 高知のよさこい関係者がソーランに思うこと ヨサコイ不思議発見!⑥

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YOSAKOIソーラン祭りの学生実行委員ら。テレビ中継も入るステージを時間通りに進行させ、高知の関係者を驚かせた

YOSAKOIソーラン祭りの学生実行委員ら。テレビ中継も入るステージを時間通りに進行させ、高知の関係者を驚かせた


 高知新聞のよさこい担当記者2人が、第31回YOSAKOIソーラン祭り(6月8~12日・札幌市)を取材し、関係者の思いを聞いてきました! 全7回の連載でお届けします。を読む)

 3年ぶり開催のYOSAKOIソーラン祭りには、新型コロナ対策の視察のために高知のよさこい祭り競演場連合会のメンバーが、運営のボランティアとして「土佐学生よさこい大会」実行委員会メンバーが、それぞれ訪れていました。実際にYOSAKOIを見たのは初という人もいます。皆さんに感想をお聞きしました

よさこい祭り…1954年、高知市で始まった祭り。鳴子を手に市民が踊り歩く。ルールは「鳴子を両手に持ち、鳴らしながら前進すること」など。

YOSAKOIソーラン祭り
…高知のよさこいが札幌に伝わり、1992年から開かれているイベント。規模は高知の2倍以上。ルールは「手に鳴子を持って踊ること」など。


■【高知大生が語る】正確な運営「もはや学生じゃない」

 YOSAKOIソーラン祭りのメイン会場「西8丁目ステージ」は、学生実行委員会が切り盛りします。そこに「土佐学生よさこい大会」(通称・土佐よさ)の実行委員会から、上野大樹さん、小川優太さん、奥住翼さんの高知大生3人が学生ボランティアとして参加していました

左から小川優太さん、上野大樹さん、奥住翼さん。「土佐学生よさこい大会」の本番に向けミーティング中

左から小川優太さん、上野大樹さん、奥住翼さん。「土佐学生よさこい大会」の本番に向けミーティング中

上野大樹さん…高知大学地域協働学部4年。高知県出身。2019年に高知大のチームでよさこい祭り初参加。2回目を踊れないまま昨年引退した。

小川優太さん…同2年。兵庫県出身。母が高知出身で、夏は帯屋町でよさこい祭りを見て育った。踊ったことはないが、よさこい熱は人一倍。次期実行委員長。

奥住 翼さん…同2年。岡山県出身。兄が高知大に進んだ縁でよさこいに出合「何て楽しそう」と衝撃を受ける。学生チームに所属している。

    ◇

奥住ソーランの学生実行委員会の運営はすごかったね。本当にレベルが高かった」

小川全員で時報を聞いて時計を合わせ、『秒』まで細かく決まってる進行を動かして。学生スタッフ70人がどう動くか、30分刻みのシフト表が用意されてた。〝裏マスター〟と呼ばれる役が『3手先を読む』とか言いながら、ばんばん指示を出して。本当に学生?と

上野学生って感じじゃなかったでね。企業の人みたい。実際、社会人の指示もかなり入るらしくて、僕らとは事情が違う部分もあるけど

6月10日夜、YOSAKOIソーラン祭り会場の場内整理をする上野さん=左=と小川さん。奥住さんは別の場所でチーム整理に汗を流した

6月10日夜、YOSAKOIソーラン祭り会場の場内整理をする上野さん=左=と小川さん。奥住さんは別の場所でチーム整理に汗を流した

小川「ただ学生に話し掛けてみると、『よさこい』が高知発祥だと知ってる人はすごく少なかった。実行委員でも3分の1くらいは北海道が本場だと思ってたみたいやし」

上野「そりゃそうか、って感じ。予想もしていたけど、いざ対面で言われるとやっぱそうなんだ~…と」

奥住「YOSAKOIの演舞は『鳴子が出たな』と思ったらすぐしまい、手踊りを始めるチームが多かったな

上野「鳴子を鳴らす動作は、高知のよさこいならではなんだと実感した。お客さんと一緒に楽しむ前提の踊りもあまりなかったし。(今年札幌を訪れた)高知の『とらっくよさこい』(=2019年のよさこい大賞受賞チーム)の『よいさ、ほいさ』的な場面はそれほど見かけなかったね」

小川「そうそう。とらっくが北海道で踊ってるのを見た時は泣けた~。”異国”の地でとらっくが踊ってる、鳴子が鳴ってる…と胸にぐっと来るものがあった。俺、(とらっくに随行していた)高知県庁の人と抱き合って泣いたもん」

■高知も転換期。互いに高め合う関係に

札幌で鳴子の音を響かせた「とらっくよさこい」

札幌で鳴子の音を響かせた「とらっくよさこい」

上野「思ったのは、ソーランと高知のよさこいは対比できるものじゃないってこと。発祥は高知県やけど、別の進化を遂げた感じやったね

奥住「そうそう。演舞は評価軸からして違う。運営は、時計合わせとかサポート要員を構えるとか、ソーランのやり方を『土佐よさ』に取り入れてもいいんじゃないかと思う場面もあったし

上野「ソーランの人たちからは『高知のよさこいってすごいですね』ってすごく言われて、リスペクトを感じた。逆に高知はどうかな、とも…。もし排他的になっているとしたら、あまり良くない気がする

競演場連合会も招かれた「30周年感謝のつどい」。札幌市と組織委員会が主催した

競演場連合会も招かれた「30周年感謝のつどい」。札幌市と組織委員会が主催した

小川「うん。良い意味での競合相手として、互いに高め合える仲間だととらえた方がいいと思う

上野「高知のよさこいもコロナ下でいろんな問題が顕在化した。今変わっていかないとよさこいは弱っていくと思うし、逆に今が進化できるチャンスでもあるのでは?と。ソーラン見ているとそんな気がしてきた」

小川「8月9日の『土佐学生よさこい大会』も絶対に良い形で終えて、来年につなげていこう」

■【競演場連合会が語る】根本的に違うもの

 競演場連合会は、よさこい祭りの会場を運営する商店街関係者らの団体です。札幌市内の各会場で感染対策を視察した丁野信二会長(62)=万々競演場=と、加田貴士副会長(57)=上町競演場=に印象的だったことを語ってもらいました。

札幌市内の会場を視察する丁野信二会長=左=と加田貴士副会長=中央

札幌市内の会場を視察する丁野信二会長=左=と加田貴士副会長=中央

丁野「主催者の『何とかしてやるんだ』という思いの強さが印象的やったね。ただ、僕はソーランを見たのが初めてやき、『これが本当によさこい⁉』と。全然違うなと思った」

加田高知のよさこいを刺し身に例えたら、『踊り子=刺し身』『地方車=つま』『フラフ(旗)=わさび』やろ。北海道は、旗とか道具も刺し身に思えるぐらいやった。見栄えと迫力重視の踊りやね」

丁野「そうよ。高知はお祭りで、北海道は劇みたい。鳴子も持つだけやったし」

加田「今回、高知から『とらっくよさこい』が行って踊ってくれたやか。もちろん僕らはうんと感動したけど、派手な演出に慣れている北海道の人はどう思ったろうと思う。『これが本場の踊りか』『きれい』とは思っても、『すごいチームや!感動した』とまでは思わんかったがやないろうか」

丁野根本的に方向性が違うきねえ。30年違うものを見てきちゅうき、ひょっとしたらおとなしく感じたかもしれんね」

■子どもが親を追い越すのはうれしい

鳴子以外のアイデアが豊富で華やかなYOSAKOIソーランの演舞

鳴子以外のアイデアが豊富で華やかなYOSAKOIソーランの演舞

丁野「けんど、高知のやり方を押し付ける気は全然ないで。そら、よさこいに関わる者として『ソーランは鳴子が鳴ってない』とは思うた。でも、いろんな地域の若者が鳴子を持って、学生時代の思い出を作ろうとしてくれゆう」

加田「そう。ソーランさんは、これだけ『よさこい』を世界に広めてくれた。今後もこのまま行ってくれたら。俺らは街の規模も人口も違うき、そんな部分で勝てるはずもない。そもそも勝ち負けじゃないがやけど
 
加田「それに俺はね、うれしいが。ソーランは、よさこいから言うたら『子』。子どもが親を追い越すくらい大きくなった。69年前の第1回から会場と踊り子隊をやりゆう町の人間として、こんなうれしいことはない」

丁野「うん。今回は行けて良かった。YOSAKOIソーランとは今までほんの一部しか交流がなかったきね。お互いのよさこいの良さを出しつつ、交流も大事にして、お互い長く続けていけるようにしていきたいね

    ◇

 高知でよさこい祭りの会場を切り盛りする皆さんも、YOSAKOIソーランにたくさんの刺激を受けたようです。
 次回は私たち、よさこい取材班の感想をお届けします。
(企画・構成=竹内悠理菜)

連載・第1回 ソーランの高知リスペクトがすごい ヨサコイ不思議発見!①
連載・第2回 「札幌の鳴子は鳴らない」と侮るなかれ ヨサコイ不思議発見!➁
連載・第3回 高知と札幌 なぜここまで違う? ヨサコイ不思議発見!➂
連載・第4回 「よさこいどこ発祥?」札幌市民の答えは ヨサコイ不思議発見!④
連載・第5回 「国道で踊りたい」平岸会場の悲願 ヨサコイ不思議発見!⑤
連載・第7回=終 初めてソーランを見た高知新聞記者が意外だったこと ヨサコイ不思議発見!⑦

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