2022.08.05 05:00
なぜ違う?高知のよさこいと札幌のYOSAKOI 理由を聞いてみた ヨサコイ不思議発見!③
駆け付けたYOSAKOIファンでいっぱいの新琴似会場
高知新聞のよさこい担当記者2人が、第31回YOSAKOIソーラン祭り(6月8~12日・札幌市)を取材し、関係者の思いを聞いてきました! 全7回の連載でお届けします。(①、②を読む)
YOSAKOIソーラン祭りを取材し、高知のよさこいとの違いを目の当たりにした取材班。踊りの形も、祭りへの向き合い方も、それぞれ違う進化を遂げています。一体なぜ? 会場でYOSAKOI関係者に理由を聞いてみました。
■よさこいとYOSAKOIは違う進化を遂げた
豪華な大道具を使った演出はYOSAKOIソーランの醍醐味
枝分かれして31年が経過し、それぞれに独自の進化を遂げました。主な違いとされている点は以下の通りです。
【よさこい祭り】
メイン会場:道路(長さ350メートル・追手筋本部競演場)
踊り:鳴子を打ち鳴らして前進する(流し踊り)
曲:土佐の民謡「よさこい節」などを基にした楽曲「よさこい鳴子踊り」をアレンジ
チームカラー:「大賞」を目指し熱心に取り組むチーム、好きなように踊る緩いチームが混在
【YOSAKOIソーラン祭り】
メイン会場:ステージ(大通公園の西8丁目)
踊り:フォーメーションや大道具で凝った演出を繰り広げる。鳴子は持つが鳴らさないことも多い
曲:北海道の民謡「ソーラン節」をアレンジ
チームカラー:審査を意識して熱心に練習するチームが大半
高知新聞の担当記者は、北海道のYOSAKOIでたくさんのカルチャーショックを受けました(詳細はこちら)。
どうして、高知とこんなに違うのか。会場近辺で会ったYOSAKOI関係者に聞いてみました。
■ステージ踊りの謎。理由は天気?
YOSAKOIソーランを代表するチームの一つ「新琴似天舞龍神」の小林伸吾・特別代表(60)=札幌市=が質問に答えてくださいました。
新琴似天舞龍神の小林伸吾・特別代表。バックはトウキビ畑
――YOSAKOIはステージ踊りが中心です。全国どこのイベントでも、道路を止めるための周辺の理解や、地方車(音響機器を積んだトラック)の用意が高いハードルになると言われます。札幌もそうですか?
小林「そうだね、一般論としてね」
――北海道ならではの理由もありますか?
小林「多分あるよ。雪とか」
――雪? 天気とよさこいに関係が?
小林「そうだよ。俺たちは6月の本祭に向けて準備するでしょ。練習してる時期が冬なのさ。外で練習できないっしょ。室内で踊るから、流し踊りよりステージ踊りの方が練習しやすいのさ」
――言われてみれば! その発想はありませんでした。
小林「高知は暑いし、よさこいは8月だもん。流し踊りの練習場所に困らないよね。北海道は4月まで雪積もってるからね」
■本気度の高さ。理由は歴史?
演舞後も真剣な表情を崩さずミーティング
小林「そりゃ、みんな賞を取って応援してもらいたいのさ」
――運営側も課題に真面目に向き合って、すごい。高知は良くも悪くも「何とかなる」「また来年」みたいな雰囲気で…。
小林「道民性もあるかもね。何と言っても俺らのルーツは開拓民。ご先祖たちは風雪に耐え、どうやって生きていこうって、常に挑戦してきたんだから」
――歴史ですか! 先々に備えないと生きていけなかった、と。
小林「高知は逆でしょ? きちきちしてたら死んじゃうんでしょ、暑すぎて。暑い時は木陰でゆっくりしないとね」
――演舞はすごく複雑で、演出も凝ってて驚きました。業者に頼むとしても、練習は大変じゃないですか。
小林「審査員受けを意識してるのもあるだろうけど、さっきも言った通り、冬だからね。暇だから。みんな凝るんだべ」
――ここにも雪の影響が!
小林「(笑)」
■鳴子が鳴らない謎。理由はソーラン節?
第1回から歌手などとして参加し、ミスターYOSAKOIソーランと呼ばれる宮本毅さん
宮本毅:皆勤参加チーム「さぁさみんなでどっこいしょ」代表。祭りを代表する楽曲「よっちょれ」「POWER!」のほか、30回記念の「バンザイ‼NARUKO CARNIVAL」の作詞・作曲も手掛けた。
――高知県民としての素朴な疑問です。YOSAKOIの皆さんが、あまり鳴子を鳴らさないのはなぜでしょう…
宮本「鳴子か~。ルール通り、ちゃんと持っていますよ。でも確かに、鳴らしてはないかも」
――何か理由があってのことなんでしょうか。
宮本「ソーラン節は知ってます? YOSAKOIソーランの楽曲に必ず入る北海道の民謡なんだけど、あれはニシン漁の歌。だから網を引きたいんです。ぐっと握って『どっこいしょー!』とやりたい」
――網を引く。確かに!
宮本「この握る動作が、鳴子を先に握ってるとやりにくいですよね。もちろん鳴子の良さも分かっているつもりですが、鳴らすことまで考えて踊りを作るのは難しい…。素手だと指先まで使えて表現の幅が広がります」
――言われれば、そうですね。
YOSAKOIソーラン大賞を受賞し、抱き合って喜ぶ「北昴」
――土地に根付いた歌から生じる違いもある、と。論文が書けそうな気がしてきました。
◇
「よさこいとYOSAKOI、なぜ違う?」。よさこい観の違いで火花がバチバチ飛ぶのでは…と危惧しつつ取材しましたが、気候や歴史など、多彩な視点からの見解が飛び出しました。つまりは「人の力を超えたところに理由がある、らしい」。そんなまとめでいかがでしょうか。
(企画・構成=竹内悠理菜)
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