2024年 06月17日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法
県体写真

2024.05.27 08:00

小社会 したたか

SHARE

 これも里の5月の光景だろう。「テッペンカケタカ」―。ホトトギスのさえずりが聞こえるようになった。昼間の歌もよいが、真夜中の響きも渋い。

 日本人が古くから親しんできた鳥で、万葉集などにも詠まれている。ただし習性はかなりしたたかなようだ。ウグイスを欺いて托卵(たくらん)し、ひなも育ててもらう。ひなはウグイスより先にふ化して、ウグイスの卵を巣の外へ。結果、親ウグイスの給餌を独占する。

 初夏、托卵のために日本にやって来る渡り鳥でもある。さすがに印象がよくないと判断したのだろう。かつて岡山県が県の鳥に指定したが、キジに差し替えた逸話まである。

 ウグイスには托卵は迷惑だとしても、あくまで自然界の定め。生物たちにはむしろ、こちらの方が驚きかもしれない。ニジマスからキングサーモンを繰り返し産ませることに、東京海洋大の研究チームが成功した。

 キングサーモンは一生に一度しか産卵しないが、生殖幹細胞をニジマスに移植すると、ニジマスがサーモンの卵や精子を毎年作るようになるらしい。トビがタカを生むということか。

 魚を効率的に養殖できる画期的な技術ではある。本紙に「地球環境の急変で苦しい状態にある魚を守るためにも重要な技術だ」との意見も載っていた。ただ、自然界のルールを超えて進む科学技術には複雑な思いもする。ホトトギスの思いはきっとこうだろう。「人間のしたたかさには負けるよ」

高知のニュース 小社会

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月