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2023.10.01 10:00

探求人の特別授業「海をめぐるウミガメ探求」 先生は高知大学の斉藤知己さんです!

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高知
(こうち)
(けん)佐川(さかわ)(ちょう)出身(しゅっしん)植物(しょくぶつ)学者(がくしゃ)牧野(まきの)富太郎(とみたろう)博士(はかせ)(1862~1957(ねん))。草木(くさき)研究(けんきゅう)一生(いっしょう)をささげた牧野(まきの)博士(はかせ)は1500(しゅ)以上(いじょう)植物(しょくぶつ)命名(めいめい)しました。高知(こうち)新聞社(しんぶんしゃ)では、(ひと)つの(みち)(きわ)めた牧野(まきの)博士(はかせ)のスピリットを()()(ひと)現代(げんだい)の「探求(たんきゅう)(じん)」が、高知(こうち)()どもたちに、発見(はっけん)やおどろきからくる(まな)びの(たの)しさを(つた)える「BOTA!探求(たんきゅう)(じん)応援(おうえん)プロジェクト」を実施(じっし)しています。


 高知(こうち)活躍(かつやく)する「探求(たんきゅう)(じん)」から(なに)かに夢中(むちゅう)になることの素晴(すば)らしさを(おそ)わる「特別(とくべつ)授業(じゅぎょう)」をリポートします。

□「BOTA!探求(たんきゅう)(じん)応援(おうえん)プロジェクト」の詳細(しょうさい)はこちら


 (だい)(かい)先生(せんせい)は、土佐(とさ)()宇佐(うさ)(ちょう)にある高知(こうち)大学(だいがく)総合(そうごう)研究(けんきゅう)センター・海洋(かいよう)生物(せいぶつ)研究(けんきゅう)教育(きょういく)施設(しせつ)教授(きょうじゅ)斉藤(さいとう)知己(ともみ)さん。「(うみ)をめぐるウミガメ探求(たんきゅう)」と(だい)した授業(じゅぎょう)に、小学生(しょうがくせい)保護者(ほごしゃ)(けい)32(にん)参加(さんか)し、3種類(しゅるい)のウミガメについて標本(ひょうほん)()ながら(まな)んだ(あと)、アカウミガメの()ガメをじっくりと観察(かんさつ)しました。


(まも)りは(かん)ぺき かたくがんじょうなこうら

 「カメが地球上(ちきゅうじょう)(あらわ)れたのは、2(おく)千万(せんまん)年前(ねんまえ)()われています。人類(じんるい)は500(まん)年前(ねんまえ)。カメの(ほう)(さき)ぱいなんですね」と斉藤(さいとう)さん。当時(とうじ)から、ほとんど(かたち)()わっていないそうです。(なが)()きのびてきた最大(さいだい)特長(とくちょう)が「背中(せなか)(がわ)、おなか(がわ)のこうら。こうらでおなかの内臓(ないぞう)部分(ぶぶん)をしっかりと(まも)れるつくりになっているんです」とアカウミガメの(ほね)標本(ひょうほん)()せながら説明(せつめい)しました。「ウミガメはかたくがんじょうなこうらを()つことによって、(ぼう)ぎょ(りょく)(まも)(ちから)(おお)きくしたと()えます」。参加者(さんかしゃ)標本(ひょうほん)をおそるおそるさわり、(あたま)(ほね)観察(かんさつ)。ウミガメには()がなく、(とり)(おな)じようなくちばしがあることも確認(かくにん)しました。


日本(にほん)産卵(さんらん)するウミガメは3種類(しゅるい)

 日本(にほん)産卵(さんらん)するウミガメは3種類(しゅるい)います。アオウミガメ、タイマイ、アカウミガメで、すべて絶滅(ぜつめつ)のおそれがあるとされています。

 アオウミガメは「高知(こうち)(けん)産卵(さんらん)場所(ばしょ)はありませんが、(かい)そうを()べに()ていると()われています」と斉藤(さいとう)さん。世界(せかい)一番(いちばん)有名(ゆうめい)なウミガメだそうです。(ふね)に1カ月(かげつ)以上(いじょう)()って(たび)をしていた(だい)航海(こうかい)時代(じだい)のこと。食料(しょくりょう)()()れる(とき)に、ウミガメやリクガメは(うご)きが(おそ)(つか)まえやすいと重宝(ちょうほう)されました。「イギリス王室(おうしつ)(ばん)さんメニューにはウミガメのスープが(はい)っていました。これがはやり、どんどん捕獲(ほかく)されて(かず)(すく)なくなりました」と(おし)えてくれました。
 

 タイマイは、こうらをおおっているうろこに特徴(とくちょう)があります。「加熱(かねつ)してたたいて成形(せいけい)できます。表面(ひょうめん)をあぶるとこげて、くっつけることができます。こうして(つく)られているのが、べっこう細工(ざいく)。ネクタイピンなどになります」と斉藤(さいとう)さん。(つづ)いて「タイマイのうろこから(つく)られた、めがねの値段(ねだん)()かる(ひと)?」とクイズを()しました。「1(まん)(えん)」「50(まん)(えん)」と口々(くちぐち)(こた)える参加者(さんかしゃ)たち。「100(まん)(えん)」という(こた)えに、斉藤(さいとう)さんが「正解(せいかい)!」と()うと、「えー!」というおどろきの(こえ)()がりました。タイマイは工芸品(こうげいひん)材料(ざいりょう)として乱獲(らんかく)され、世界(せかい)一番(いちばん)(かず)(すく)ないそうです。

左からアオウミガメ、タイマイ、アカウミガメのうろこ

左からアオウミガメ、タイマイ、アカウミガメのうろこ


 アカウミガメは、高知(こうち)(けん)に5(がつ)から8(がつ)(よる)産卵(さんらん)()ます。まず、(よっ)つの(あし)使(つか)って自分(じぶん)(からだ)(おさ)まるようなくぼみを(つく)ります。そして、(まる)いつつ(がた)(あな)(うし)(あし)であけ、100()ほどの(たまご)()みます。(あな)をうめた(あと)、どこに()んだか()からないように(すな)をかけ、カモフラージュをします。全部(ぜんぶ)で1~2時間(じかん)かかるそうです。参加者(さんかしゃ)(たまご)のからにもふれて、「ニワトリよりうすいねー」と(まな)んでいました。



 産卵(さんらん)からかえるまで、(やく)カ月(かげつ)かかります。斉藤(さいとう)さんは「(おき)()()ガメは、(きた)太平洋(たいへいよう)中央(ちゅうおう)()にいることが()かっています。大人(おとな)になってから日本(にほん)沿岸(えんがん)にやってきます。何歳(なんさい)まで寿命(じゅみょう)があるか、まだ()かっていません」と()います。

◆いっせいに砂浜(すなはま)から()()ガメたち

 斉藤(さいとう)さんは、()ガメが()まれる様子(ようす)動画(どうが)()せてくれました。(すな)表面(ひょうめん)にきれつができ、1ぴきの()ガメが(あらわ)れると、(つぎ)から(つぎ)へと()てきます。「めっちゃおる」「かわいいー」と参加者(さんかしゃ)たちは興味(きょうみ)しんしんです。「()ガメを()べに()捕食者(ほしょくしゃ)がいない(よる)時間(じかん)をねらって、いっせいに砂浜(すなはま)から脱出(だっしゅつ)して(うみ)にかけおりてきます」と斉藤(さいとう)さん。

 「捕食者(ほしょくしゃ)はだれですか?」という参加者(さんかしゃ)質問(しつもん)に「砂浜(すなはま)(たまご)なら、高知(こうち)場合(ばあい)はキツネ、野犬(やけん)、スナガニ。()ガメの捕食者(ほしょくしゃ)は、スナガニやカラス。(うみ)(はい)ったら、アジやハタの仲間(なかま)など肉食(にくしょく)(ぎょ)です。(おお)きくなってからは、サメの仲間(なかま)(とく)有名(ゆうめい)なのがタイガーシャークで、さんごしょうの(あさ)(うみ)までやってきてカメを(まる)のみにすることで有名(ゆうめい)です」。



◆オス、メスを()めるのは温度(おんど)


 研究(けんきゅう)施設(しせつ)見学(けんがく)もありました。(たまご)をかえす機械(きかい)(みっ)つあり、27()、29()、31()とそれぞれ温度(おんど)がちがいます。()ガメの生存(せいぞん)(りつ)(たまご)からかえる割合(わりあい)調(しら)べていました。ウミガメの性別(せいべつ)は、29()のあたりで()かれます。(うえ)ならメス、(した)ならオスになるそうです。(そと)には、(ちい)さな()ガメがたくさん。アオウミガメはおなかが(しろ)く、元気(げんき)いっぱいでした。()ガメを()にした参加者(さんかしゃ)は「前足(まえあし)()()たると、(いた)いくらい」とびっくり。こうらをさわったり、写真(しゃしん)をとったりして(たの)しみました。



◆“研究者(けんきゅうしゃ)”になってこうらの(なが)さを測定(そくてい)

 さあ、()ガメとじっくりふれあいます。アカウミガメの(あか)ちゃんを観察(かんさつ)すると、こうらの中央(ちゅうおう)付近(ふきん)(すこ)しでっぱりがあります。「キールといい、()どもの(とき)にしかない特徴(とくちょう)です。()ガメが(おき)(およ)いでいく(とき)に、キールがないと(よこ)にゆれて(およ)ぎが安定(あんてい)しない」と斉藤(さいとう)さん。こうらを(はか)るため、参加者(さんかしゃ)()わたされたのは「ノギス」という器具(きぐ)。ミリ単位(たんい)まで正確(せいかく)(はか)ることができ、世界(せかい)(じゅう)研究者(けんきゅうしゃ)使(つか)っています。ノギスをこうらにあて、“研究者(けんきゅうしゃ)”として、注意深(ちゅういぶか)目盛(めも)りを()参加者(さんかしゃ)たち。「45.5ミリメートル」「47.9ミリメートル」とあちこちから(こえ)()がりました。



絶滅(ぜつめつ)危機(きき)にあるウミガメたち

 最後(さいご)に、斉藤(さいとう)さんがいくつかの写真(しゃしん)()せてくれました。東南(とうなん)アジアの(くに)でウミガメの(にく)(たまご)()っている様子(ようす)。ごみだらけの砂浜(すなはま)()んだオサガメのおなかから()てきたビニールなどの化学(かがく)製品(せいひん)高知(こうち)海岸(かいがん)の75年前(ねんまえ)と5年前(ねんまえ)航空(こうくう)写真(しゃしん)(くら)べて()ると、砂浜(すなはま)がせまくなっているのが()かりました。砂浜(すなはま)()かれたコンクリートブロックも、産卵(さんらん)(むずか)しくしています。「高知(こうち)海岸(かいがん)産卵(さんらん)一番(いちばん)(おお)かったのは、2013(ねん)。その(とし)は88(かい)でしたが、今年(ことし)は6(かい)。15(ぶん)の1になっています」と斉藤(さいとう)さん。「ウミガメは人間(にんげん)活動(かつどう)のえいきょうを()けて絶滅(ぜつめつ)危機(きき)にあります」としめくくりました。

 

 熱心(ねっしん)(みみ)をかたむけ、じっくりと(まな)んだ参加者(さんかしゃ)たちのノートはメモでいっぱいでした。「ウミガメを観察(かんさつ)できたし、(たまご)(なん)()()むのかなど()らないことが()れてよかった」「温度(おんど)によってオスとメスになるのが面白(おもしろ)いと(おも)った」などと(はな)していました。

斉藤(さいとう)先生(せんせい)から
 (うみ)をめぐるウミガメにせまった特別(とくべつ)授業(じゅぎょう)最後(さいご)斉藤(さいとう)先生(せんせい)からのメッセージです。


 「高知(こうち)(けん)は、(さいわ)いにも自然(しぜん)がまだ(のこ)されています。自然(しぜん)そのものが博物館(はくぶつかん)のような(ところ)ですので、(つくえ)(うえ)勉強(べんきょう)ばかりじゃなくて、(やま)(うみ)()て、生物(せいぶつ)()れて、自然(しぜん)(なか)でいろんな体験(たいけん)をしてください。自然(しぜん)から(まな)べることがいっぱいあります。そういう経験(けいけん)をして、将来(しょうらい)(なん)らかの(かたち)自然(しぜん)(まも)ることにこうけんできるような大人(おとな)になってほしいなあと(おも)います」



 斉藤(さいとう)先生(せんせい)のインタビュー記事(きじ)はこちら

特集 読もっか 探求人の特別授業

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