探求人の特別授業「春の植物のひみつ探求」　先生は牧野植物園の田辺由紀さんです！

2023.04.20 10:10

探求人の特別授業「春の植物のひみつ探求」　先生は牧野植物園の田辺由紀さんです！

高知新聞社

　
高知(こうち)県(けん)佐川(さかわ)町(ちょう)出身(しゅっしん)の植物(しょくぶつ)学者(がくしゃ)、牧野(まきの)富太郎(とみたろう)博士(はかせ)（１８６２～１９５７年(ねん)）。草木(くさき)の研究(けんきゅう)に一生(いっしょう)をささげた牧野(まきの)博士(はかせ)は１５００種(しゅ)以上(いじょう)の植物(しょくぶつ)を命名(めいめい)しました。高知(こうち)新聞社(しんぶんしゃ)では、一(ひと)つの道(みち)を究(きわ)めた牧野(まきの)博士(はかせ)のスピリットを受(う)け継(つ)ぐ人(ひと)、現代(げんだい)の「探求(たんきゅう)人(じん)」が、高知(こうち)の子(こ)どもたちに、発見(はっけん)やおどろきからくる学(まな)びの楽(たの)しさを伝(つた)える「BOTA! 探求(たんきゅう)人(じん)応援(おうえん)プロジェクト」を実施(じっし)しています。

　高知(こうち)で活躍(かつやく)する「探求(たんきゅう)人(じん)」から何(なに)かに夢中(むちゅう)になることの素晴(すば)らしさを教(おそ)わる「特別(とくべつ)授業(じゅぎょう)」をリポートします。

□「BOTA! 探求(たんきゅう)人(じん)応援(おうえん)プロジェクト」の詳細(しょうさい)はこちら

　第(だい)１回(かい)の先生(せんせい)は高知(こうち)県立(けんりつ)牧野(まきの)植物園(しょくぶつえん)、植物(しょくぶつ)研究(けんきゅう)課(か)主任(しゅにん)の田辺(たなべ)由紀(ゆき)さん。「春(はる)の植物(しょくぶつ)のひみつ探求(たんきゅう)」と題(だい)した授業(じゅぎょう)に小学生(しょうがくせい)と保護者(ほごしゃ)20人(にん)が参加(さんか)しました。

◆標本(ひょうほん)にはドラマがいっぱいつまっています
　授業(じゅぎょう)は高知(こうち)県立(けんりつ)牧野(まきの)植物園(しょくぶつえん)の紹介(しょうかい)から始(はじ)まりました。牧野(まきの)植物園(しょくぶつえん)の役割(やくわり)は①いこいの場(ば)②植物(しょくぶつ)の知識(ちしき)、楽(たの)しさを広(ひろ)める③植物(しょくぶつ)の調査(ちょうさ)、研究(けんきゅう)、保全(ほぜん)を行(おこな)う④牧野(まきの)富太郎(とみたろう)の功績(こうせき)を伝(つた)える―の四(よっ)つ。植物(しょくぶつ)を育(そだ)てたり、調(しら)べたり、教育(きょういく)普及(ふきゅう)活動(かつどう)をしたり、さまざまな職種(しょくしゅ)のおよそ90人(にん)が働(はたら)いているそうです。

　田辺(たなべ)さんの仕事(しごと)は野生(やせい)植物(しょくぶつ)の調査(ちょうさ)研究(けんきゅう)や外来(がいらい)植物(しょくぶつ)の防除(ぼうじょ)。タンポポを地域(ちいき)の人(ひと)といっしょに調(しら)べることもあります。

　標本(ひょうほん)には「ドラマがいっぱいつまっています」と話(はな)す田辺(たなべ)さん。地元(じもと)の人(ひと)に案内(あんない)してもらって山(やま)に分(わ)け入(い)り植物(しょくぶつ)を集(あつ)めたことなど「標本(ひょうほん)は大事(だいじ)な研究(けんきゅう)資料(しりょう)であると同時(どうじ)に、みなさんと採集(さいしゅう)したシーンを思(おも)い出(だ)すアルバムのようにも思(おも)います」。人(ひと)といっしょに作(つく)り上(あ)げるところにも、仕事(しごと)の楽(たの)しさややりがいを感(かん)じるそうです。

◆見(み)た目(め)は？　においは？　植物(しょくぶつ)をじっくり観察(かんさつ)しました
　いよいよ植物(しょくぶつ)の観察(かんさつ)です。全員(ぜんいん)にタチツボスミレの花(はな)が配(くば)られました。

　「よく観察(かんさつ)してみてください。スミレのなかまは花(はな)びらが５枚(まい)あります。下(した)についている花(はな)びらに模様(もよう)が入(はい)っています。虫(むし)の気持(きも)ちになって紫色(むらさきいろ)の筋(すじ)をじっと見(み)てください」

　田辺(たなべ)さんが呼(よ)びかけます。参加者(さんかしゃ)はルーペを持(も)ち、花(はな)に顔(かお)を寄(よ)せます。

　「筋(すじ)の真(ま)ん中(なか)が、ちょっとへこんでいるのが分(わ)かりますか？」

　静(しず)かだった会場(かいじょう)から「おっ」「あっ」「あった」と声(こえ)が上(あ)がりました。

　「くぼみの奥(おく)にはみつがあります。ストローのような口(くち)のある虫(むし)がやって来(き)て、みつをすいます。その体(からだ)に花粉(かふん)がついて、ほかの花(はな)に飛(と)んで行(ゆ)き、受粉(じゅふん)できるんですね」

　「ルーペなどを使(つか)ってよく見(み)ると、植物(しょくぶつ)の面白(おもしろ)さが見(み)つかると思(おも)います」。外(そと)からぱっと見(み)ただけでは分(わ)からない、よく考(かんが)えられたつくりにみんな興味(きょうみ)しんしんでした。

　そして教室(きょうしつ)の舞台(ぶたい)は屋外(おくがい)に。次(つぎ)は五感(ごかん)を使(つか)って観察(かんさつ)します。

　田辺(たなべ)さんが「鼻(はな)を使(つか)ってみてください。へんなにおいがしませんか？　においの元(もと)はヒサカキという植物(しょくぶつ)です」。みんな、ヒサカキの枝(えだ)を鼻(はな)に近(ちか)づけます。

　「いい香(かお)りと表現(ひょうげん)する人(ひと)は少(すく)ないんです。ガスもれ、塩(しお)ラーメン、メンマと例(たと)える人(ひと)もいます。みなさんはどうですか？」

　工場(こうじょう)のにおい、おにぎり、ガス―。観察(かんさつ)シートには、一人(ひとり)一人(ひとり)が感(かん)じたにおいが書(か)きとめられました。

　次(つぎ)に観察(かんさつ)したのはムサシアブミ。「何(なに)かに似(に)ていると思(おも)いませんか？」と田辺(たなべ)さんが声(こえ)をかけると、「へび！」とすぐに声(こえ)が上(あ)がりました。英語(えいご)ではコブラリリーといわれていて、こんにゃくのなかま。参加者(さんかしゃ)は雄株(おかぶ)と雌株(めかぶ)の花(はな)の形(かたち)を確(たし)かめました。

　観察(かんさつ)するといろいろなことが分(わ)かります。田辺(たなべ)さんは「みなさんも本(ほん)に書(か)いていることをうのみにせずに、自分(じぶん)で確(たし)かめることをやってもらいたいです」と語(かた)りかけていました。

◆標本(ひょうほん)は時間(じかん)も場所(ばしょ)もこえます
　いつもは研究者(けんきゅうしゃ)しか入(はい)れない植物(しょくぶつ)標本(ひょうほん)庫(こ)にも入(はい)ることができました。牧野(まきの)植物園(しょくぶつえん)にある標本(ひょうほん)の数(かず)は３０万(まん)点(てん)以上(いじょう)。棚(たな)には標本(ひょうほん)がぎっしり並(なら)んでいます。ミャンマーなど海外(かいがい)の植物(しょくぶつ)の標本(ひょうほん)もあります。

　「標本(ひょうほん)のいいところは、いつでも、どこでも咲(さ)いている状態(じょうたい)を確認(かくにん)できることです」。田辺(たなべ)さんがそう話(はな)しながら桜(さくら)の標本(ひょうほん)を見(み)せてくれました。

　牧野(まきの)富太郎(とみたろう)博士(はかせ)が１９１５年(ねん)４月(がつ)10日(か)に、東京(とうきょう)の上野公園(うえのこうえん)で採集(さいしゅう)したソメイヨシノの標本(ひょうほん)です。

　「今(いま)より咲(さ)くのが、おそいですよね。最近(さいきん)は地球(ちきゅう)温暖(おんだん)化(か)で桜(さくら)の開花(かいか)が早(はや)くなっているのではないかなど環境(かんきょう)の指標(しひょう)にもなりますね」。時間(じかん)も場所(ばしょ)も飛(と)びこえて、さまざまなことを伝(つた)えてくれる標本(ひょうほん)に、参加者(さんかしゃ)は見入(みい)っていました。その後(ご)は、みんなでペンペングサの標本(ひょうほん)作(づく)り。田辺(たなべ)さんが「押(お)し花(ばな)に、採集(さいしゅう)した時(とき)の情報(じょうほう)を書(か)くと標本(ひょうほん)になります。自由(じゆう)研究(けんきゅう)などでは採集(さいしゅう)した日(ひ)、場所(ばしょ)、人(ひと)を記録(きろく)するようにしてくださいね」とアドバイス。さっそく「楽(たの)しい。夏休(なつやす)みの自由(じゆう)研究(ｓけんきゅう)でやってみたい」という人(ひと)もいました。

◆田辺(たなべ)先生(せんせい)から
　植物(しょくぶつ)のひみつにせまった特別(とくべつ)授業(じゅぎょう)。最後(さいご)に田辺(たなべ)先生(せんせい)からのメッセージです。

　「植物(しょくぶつ)に興味(きょうみ)を持(も)ってもらえたらうれしいです。今(いま)の時代(じだい)はインターネットもあって知(し)りたいことをすぐ知(し)れるけど、本当(ほんとう)にそうかなと思(おも)って確(たし)かめたりして、インターネットや本(ほん)で得(え)られた知識(ちしき)を自分(じぶん)のものにして、次(つぎ)の人(ひと)に発信(はっしん)してほしいです。おうちの方(かた)もお子(こ)さんといっしょに、植物(しょくぶつ)を楽(たの)しみながら子育(こそだ)てしていただけたらと思(おも)います」

　□田辺(たなべ)先生(せんせい)のインタビュー記事(きじ)はこちら

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