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2024.05.26 05:00

【EUのAI規制】適正活用広げる一助に

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 欧州連合(EU)が世界に先駆けて、人工知能(AI)の包括規制に踏み切る。違反行為に厳罰を科すAI規制法が成立し、2026年から全面適用される。
 AIは生活や仕事の利便性を高める一方で、偽情報が拡散したり、人権や民主主義が侵害されたりするリスクがある。規制法はそうしたリスクを摘み取ることを目的に、体系的にルールを定めた。
 功罪あるAIの「負」の側面を明確にした上で、それらへの対応策に域内各国が合意したことは、大きな節目だといえる。
 AIの活用を縛りすぎるとの懸念も指摘されるが、リスクは世界共通だけに日本を含めた他国が無視することはできない。一つのモデルとして共有し、必要なら追随するなどしてAI活用の健全性を高めていく必要がある。
 規制法は、AIの使い方によってリスクの高さを4段階に分類し、深刻なリスクほど厳しく縛った。
 個人の特徴に基づく信用格付け(ソーシャルスコアリング)や、宗教や性的指向、人種を利用した分類システムへのAIの利用、顔画像の無差別収集などは「許容できないリスク」として禁止する。それに次ぐ「高リスク」の行為に、入試や採用試験でのAI利用などを挙げ、事業者に厳格な運営管理を求める。
 また、チャットGPTなど生成AIの急速な発展を受け、AIで作られた画像や音声には使用の明示も義務づけるなどした。
 違反時は、最大3500万ユーロ(約60億円)か年間売上高の7%か、高い方を制裁金に科す。その額からは違反行為に対する強い姿勢がうかがえる。EU内で活動する全ての企業が対象で、日本企業も実質的に規制される。強い関心を持つ必要があるだろう。
 一方、厳しい規制下ではAIの開発や利用が制約されるなどの理由で、企業が域内から流出する可能性も高まる。こうした懸念に配慮し、企業の負担軽減策や規制緩和策の議論も継続して行われているようだ。
 AIの規制と活用のバランスは、まだ手探りの面があるのが実情だろう。引き続き、技術の進展に応じた対応が求められる。
 AIが世界に普及する中、その規制、管理が国境を超えて機能しなければ実効性も薄れる。国際的に協調していく姿勢も鍵になる。
 日本では、政府がAI事業者向けガイドラインを今春、公表した。人権配慮や偽情報対策を求めるなど企業に自主規制を促したが、強制力を欠くため、規制法の導入方針に転じた。深刻なリスクに対抗するのは当然だが、EU同様に規制と活用のバランスが焦点となる。
 先進7カ国(G7)は昨年の広島サミット開催などを通じ、AIに関する国際的なルール形成の枠組み「広島AIプロセス」に合意した。政府はこの枠組みへの賛同国を広げていく方針だ。AIの適正活用に向けて、国際的な機運を高めていく役割も積極的に果たしていきたい。

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