2024年 06月17日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法
県体写真

2024.05.25 08:00

小社会 運動会の昼休み

SHARE

 漫画家の東海林さだおさんは食エッセーの名手でもあり、食への造詣が深い。その食通が、今まで食べてきた昼食の中で「特別の深い思い入れがある」のが小学生の時の運動会のそれだという。

 少年にとって運動会は競技の緊張でつらい日だった。だが、安心感からだろう。昼休みに青空の下で両親と食べた弁当は「つらさを補って余りある」存在で、甘辛のいなりずしが「特においしく感じられた」(著書「ゴハンですよ」)。運動会の昼のだんらんは、もう日本の原風景に近い。共感する人も多いのでは。

 親も親で、「早朝から弁当作りで、大変」と嘆きつつ、どこか楽しそうな人をよく見かける。もちろん美談ばかりではない。親が来ない児童もいるが、それをどうカバーするかは先生の腕の見せどころだったりもする。運動会の昼に流れる時間は濃密だ。

 ただ、その情緒が薄れつつある。いま運動会は5月開催が主流に。今年はあすという学校が多い中、コロナ禍で簡素化され、半日開催が多数とみられる。

 半日化には、教員の負担軽減が必要で熱中症が怖いとの理由もある。ごもっとも。弁当作りを省けて歓迎する親もいるだろう。けれど、運動会でしか味わえない弁当の味もある。失われるものも自覚しておかねば。

 ポスト・コロナ時代の一つの象徴のようでもある。コロナ禍で消えたとしても、忘れてはいけないものは、運動会の弁当だけではあるまい。

高知のニュース 小社会

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月