2024.05.25 08:00
【自転車に青切符】取り締まり基準を明確に
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自転車は手軽で環境に優しい乗り物だが、近年は赤信号や一時停止を無視したり、スマートフォンを使いながら走ったりするなどの違反が目立つ。安全に利用し、重大事故を防ぐ契機にしたい。
現状では、軽微な違反は指導警告票の交付にとどめ、悪質性が高い違反には交通切符(赤切符)を交付している。赤切符の場合は、起訴を見据えた捜査が必要で、現場の処理時間に40~50分ほどかかる。警察と違反者双方に負担が大きいとされる。
一方で青切符は、軽微な違反に反則金の納付を求める行政手続きで、反則金を納めれば刑事罰を科さない。処理時間が短縮され、効率的な取り締まりと安全運転の指導が可能になるという。車やバイクでは既に導入されている。
対象は16歳以上で、酒酔い運転や酒気帯び運転など悪質、危険な運転を除く115種類程度の違反に適用される。主には信号無視や指定場所一時不停止、走行中のスマホや携帯電話使用(ながら運転)などを取り締まる。警察官の指導や警告に従わずに違反を続けたり危険な走行をしたりした場合が想定される。反則金の額はミニバイクと同程度の5千~1万2千円ほどになる見通しだ。
導入の背景には、相次ぐ自転車事故がある。
警察庁によると、昨年は7万2339件発生し、3年連続の増加となった。約7割で自転車側に違反があった。交通事故全体に占める割合は約2割で、2017年以降、増加傾向にある。
危険な走行や事故を減らす効果は一定あるだろう。だが忘れてはならないのは、目的は安全な交通環境の実現だということだ。警察は、利用者に恣意(しい)的な取り締まりととられないよう、制度の運用方針や具体的な摘発基準を明確にし、丁寧に周知する必要がある。
併せて交通安全教育にも力を入れたい。運転免許が不要の自転車は、ルールを体系的に学ぶ機会が少なく、十分に浸透していない。
青切符は、通学などで自転車を利用する高校生ら未成年も対象となる。学校や地域などで講習を受けられる環境づくりが求められる。
昨年4月からは、ヘルメットの着用が全ての年齢で努力義務となっている。しかし、着用率は10%余りと伸び悩む。県内でも高校生の着用率は23年秋時点で15%にとどまる。県教委は25年度の県立校の新入生から、自転車通学生にヘルメットの所有を義務付ける方針を決めた。
命を守る正しい乗り方を改めて確認しておきたい。
改正案では、車道で自転車を追い越す車に、間隔に応じた安全な速度での走行も求めた。
専用レーンなど自転車の走行環境の整備も十分でなく、急ぐ必要がある。歩行者、自転車、車が共に安心できる社会でありたい。