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2024.05.24 08:00

【共同親権の導入】懸念はまだ拭えていない

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 離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」を導入する改正民法が成立した。公布から2年以内に施行される。
 親権は、未成年の子に対して親が持つ権利と義務のことで、身の回りの世話や教育、財産の管理からなる。これまでは父母どちらか一方に親権が認められてきたが、話し合って共同親権も選べるようになる。
 離婚後も父母の関係が良好なら、共同親権は子どもの利益につながるだろう。しかし、現実はそれほど簡単ではない。
 改正法は、離婚後の親権については父母の協議で決め、意見が対立した場合は家裁が判断する。既に離婚した父母も親権変更の申し立てができると規定する。
 懸念されるのが、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待のある場合だ。
 改正法は、DVや虐待の恐れがあれば、家裁は単独親権にしなければならないとする。だが、家裁が見逃し、共同親権になることを懸念する当事者の声は根強い。加害者側の元配偶者との接点が再び生まれ、被害が継続する恐れがあるからだ。
 高知市のDV被害者支援団体の代表は、親権を巡る手続きが被害者の精神的負担になるとする。離婚問題に取り組む弁護士は、DVの立証の難しさを挙げ、家裁が適切に判断できるか疑問視する。
 DVや虐待の多くは、密室で行われ、外部から見えにくく、証拠が残りにくい。被害を客観的に証明するのは難しい。家裁が適切に対応できるかが問われている。
 司法統計によると、全国の家裁が2022年に受理した家事事件の申し立ては約114万件で、10年間で30万件近く増えている。新たな役割に応えられるだけの裁判官の増員や、DVなどに対する専門性の向上が求められる。
 子どもに関わる事柄を決める場面についても、あいまいさが残ると指摘される。
 政府は、共同親権となっても、食事や習い事などの「日常の行為」や緊急手術など「急迫の事情」に当たる行為は、どちらかの親だけで決められる。一方、転居や進学先の選択などは双方の同意が必要だとする。
 線引きが難しいケースもあり、当事者らが混乱する恐れがある。施行までに具体例を示す必要がある。
 導入の背景には、共同親権が主流である諸外国の状況もある。しかし、欧米では別居親の権利を高めた結果、面会交流中に子どもに危害が及び、見直しの動きもあるという。海外の実情も考慮し、子どもの安全を確保しなければならない。
 付則には、「父母の真意を確認する措置を検討する」と盛り込まれ、施行後5年で制度を見直す規定が追加された。
 近年は3組に1組が離婚し、親が離婚した未成年の子は年間16万人に上る。子どもの意見を聞き取る体制も整備し、不利益が及ばないようにしたい。最優先されるべきなのは、子どもの幸せだ。

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