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2023.07.14 08:20

「ヤマトグサ」命名、田邊教授の激怒は史実 ドラマの標本は牧野植物園が作成 朝ドラ「らんまん」

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©️NHK

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 朝ドラ「らんまん」の万太郎(神木隆之介)がついに「ヤマトグサ」を新種であると発表しました。このことが画期的だったのは、日本人が日本の学術誌を使って国際的な命名ルールに基づいた発表を初めて行った、ということでした。

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 これまでドラマにも若き植物学者の伊藤篤太郎がモデルと思われる伊藤孝光(落合モトキ)が登場していました。彼は英国留学中にトガクシショウマ(トガクシソウ)を新種として外国の学術誌に発表していました。それはヤマトグサより早い時期でした。ドラマの田邊教授(要潤)も、この植物の研究をしており、伊藤に先を越されて新種発表されたことに激怒していました。

 史実では伊藤篤太郎の後に、牧野博士たちのヤマトグサの新種発表があったのです。つまりこれは「純国産」の新種発表であり、これから日本の植物学は、海外の研究者や学術誌などを頼らずにできるようになったのです。画期的なことでした。



 そして面白いのは新種発表は、ドラマでは大窪(今野浩喜)と共同で行ったということです。最初は万太郎に反感を持っていた大窪が、万太郎の植物に対する純粋な気持ちとその深い知識と技術を認めて、頭を下げて共同研究を願いました。2人の懸命な研究、それを認めて支える東大植物学教室の助教授や学生たちの姿は感動的でした。

 この感動的なエピソードも、ほぼ史実に基づいています。ヤマトグサの学名発表は植物学雑誌で行われて、牧野博士は大久保三郎との連名で行っています。当時、大久保は東大植物学教室で既に助教授でした。2人の間に、どんな信頼関係があったのかは、よく分かっていません。しかし初めての「純国産」発表を2人で行うのですから、ドラマのようなシーンもあったのかなあと思わされるのです。

 学名発表は植物標本を基にして行われます。ドラマにもヤマトグサの標本がたびたび登場しましたね。このドラマで使われた植物標本は、高知県立牧野植物園の全面的な協力で行われています。

ヤマトグサの植物標本を作成する田辺由紀さん(写真はいずれも高知県立牧野植物園提供)

ヤマトグサの植物標本を作成する田辺由紀さん(写真はいずれも高知県立牧野植物園提供)

 ヤマトグサの植物標本を作成したのは、同園​​植物研究課の田辺由紀さん。植物標本作成のプロフェッショナルです。ヤマトグサの開花時期は4〜5月上旬です。昨年の4月下旬、高知県内で自生、栽培されている貴重なヤマトグサを採集して植物標本にしました。全部で5枚を作成し、NHKに提供しました。万太郎や大窪が凝視しているのは、この田辺さんが作ったヤマトグサの標本なのです。

 田辺さんは「ヤマトグサはとても柔らかい植物なので、丁寧に扱う必要がありました。乾燥させると、すぐに黒くなってしまうという特徴もあります」と話します。そしてドラマでは、とても珍しい貴重な植物標本として扱われています。それをとても嬉しく思っているそうです。田辺さんは「植物標本というものがある、ということをテレビを通じて多くの人に知ってもらえて感慨深いですね」と話しています。(竹内 一)

高知のニュース 牧野富太郎

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