2023.07.10 11:35
「ヤマトグサ」命名は画期的業績 初の「純国産」新種発表だった! 朝ドラ「らんまん」の週タイトルに
花を咲かせたヤマトグサ(高知市五台山の高知県立牧野植物園、 森本敦士撮影)
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それから5年後、東京大学植物学教室の大久保三郎助教授とともに、この植物を新種の「ヤマトグサ」と命名して「植物学雑誌」で発表しました。大久保はドラマに登場している講師の大窪(今野浩喜)のモデルと考えられます。ドラマでの大窪は万太郎に最初は批判的だったのですが、次第に万太郎の才能を認めるようになりました。
ヤマトグサの論文発表は、日本の植物学会にとって画期的なことでした。海外の雑誌で留学中の日本人が新種の論文発表をしたことはありました。それは伊藤圭介という植物学者で、ドラマでは伊藤篤太郎(落合モトキ)として描かれていましたね。つまりヤマトグサの新種発表は、日本人が日本の学会誌を使って初めて行ったものだったのです。いわば「純国産」の新種発表であり、その学名と和名の命名となったのです。
それまでの日本人植物学者は、ロシアのマキシモヴィッチら海外の植物学者に標本を送り、彼らの研究と執筆によって新種発表を行っていました。ドラマの中で万太郎がマキシモヴィッチに送ったマルバマンネングサが新種と認められて、命名には万太郎の名も含まれていて狂喜しました。しかし万太郎は海外の植物学者を頼らず、自分たちで新種発表をしたいという思いがありました。その思いがヤマトグサで実現したのです。
牧野博士によるヤマトグサの発見は1888年のことでした。それから100年以上が過ぎた現在も、仁淀川町の名野川ではヤマトグサが保全されていて、花を咲かせています。(竹内 一)
「ヤマトグサ命名の真相」(上) シン・マキノ伝【16】=第2部= 田中純子(牧野記念庭園学芸員)