2023.01.30 08:37
健康で幸せな人生を パーソナルトレーナー 堀川奨さん(27)高知市―ただ今修業中
「トレーニングを楽しく」と話す堀川奨さん=後ろ(高知市栄田町3丁目の「Beginning fitness」)
「そうそう。ダンベルはまっすぐ上げて」「もう1回、頑張ろう」。息が荒くなってきた男性(25)に優しく声を掛ける。肩に触れ、効かせている筋肉を意識させる。
「フッ、フッ、ウーッ」。10回を3セットやりきった男性はダンベルを下ろし、ようやく目尻を下げた。すぐ後ろで、自身もにこりほほ笑む。
トレーナーで経営者でもあるジムの名は「Beginning fitness(ビギニングフィットネス)」。健康でたくましく、美しく。なりたい自分になる、始まりの場所に。そんな願いを込めた。
◆
高知市出身。自営業だった父親からずっと、消防士になるよう言われていた。
「父のきょうだいが自衛官で、人を守る仕事に思い入れがあったんだと思います。僕も、消防士以外は考えなかった」
高知西高校を卒業後、市消防局に消防士として採用された。
念願かなったが、ほどなくして「働く理由」で悩み始めた。
人命を救うやりがいは感じる。ただ、親の勧めで就いたのも事実。「使命感が強い同僚への引け目というか…。ここにいていいのか?と」
悩みが膨らみ切った20歳の頃だった。「運動しよう」と消防局の先輩に筋トレに誘われた。
小中高と水泳に打ち込み、県内では名の知られた選手だった。ランニングも続けていた。すぐに筋トレにのめり込んだ。上げられるバーベルが徐々に重くなる喜びと、驚くほど変わる肉体。「人生が変わった、と思えるほど」
熱中するものが見つかり、フィットネス大会にも出場するように。そこで出会ったRIZAP(ライザップ)のトレーナーの、「トレーナーは関わった人を幸せにできる仕事」という言葉に、人生を懸けようと決めた。
21歳で退職。RIZAPに入社し、神奈川と高知の店で経験を積んだ。2019年7月、古里にはまだパーソナルジムが少なかったことに商機を見いだし、独立した。
1年が過ぎた頃。「服のサイズをLLからMにしたい」と願う50代女性が訪れた。1年かけて、運動と食事をじっくりと指導。35キロの減量に成功した。
「先生に会えてよかった」。女性の言葉に「うれしかった。ずーっと、真剣に頑張ってらっしゃったので」。あの日の、「人を幸せにする仕事」という言葉をかみしめた。
◆
好きな言葉
「今日一日、とにかく頑張りましょう」とよく声を掛ける。トレーニングも人生も、日々のベストの積み重ねがいい未来につながると信じている。「ワクワクできて、健康で幸せになれる。そんなジムを目指していきたい」
写真・反田浩昭
文・馬場隼