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2022.07.24 08:35

安倍氏国葬、県民異論相次ぐ 税金投入には疑問 指導力評価の声も 400人調査【なるほど!こうち取材班】

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 政府が9月27日の実施を閣議決定した安倍晋三元首相の国葬について、県民約400人に賛否を聞いたところ、「世界のリーダーだった。国葬で弔意を示すのは当然だ」と賛成する声の一方、森友・加計学園問題や「桜を見る会」の疑惑などに対する批判も強く、「税金を他のことに使って」と反対する意見が過半数を占めた。銃撃事件のショックが残る中、生前の安倍氏の功罪を巡って県民の賛否が交錯している。

 アンケートは22、23日に高知市の街頭や本紙総支社局を通じて行い、161人が回答。県民・読者からの意見を受け付ける「なるほど! こうち取材班」(なるこ取材班)のLINE(ライン)窓口からも呼び掛け、友だち登録をしている249人が答えた。一般的な無作為抽出の世論調査とは異なるが、集計では賛成26・8%に対し、反対55・4%。「どちらともいえない」は17・8%だった。

■「偉大な政治家」
 憲政史上最長の8年8カ月間にわたって政権を率いた安倍氏。国葬に賛成する県民は、強いリーダーシップや「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げた外交手腕を理由に挙げる人が多かった。

 「実績からして国葬は当然」とするのは安芸市の50代男性公務員。「日本の防衛力を強化し、世界の中での日本の地位を押し上げた偉大な政治家だ。どんなかたちで亡くなったとしても国葬で弔うべき人だ」と述べた。

 高知市の50代男性タクシー運転手は「安全保障分野を前進させた。国益につながるリーダーシップをしっかり発揮できる人はなかなかいない」と評価。香美市の40代パート女性は「国のことを考え、尽くしてくれたことは間違いない。その人生に対して国葬で感謝をささげてもいいのでは」と話した。

 賛成する10代からは親しみや存在感の大きさを挙げる声が出た。

 高知市の女子大学生は「物心ついたときから首相といえば安倍さん。ツイッターやテレビでは悲しむ声ばかりだった」と悼み、土佐町の男子高校生は「アベノミクスで経済を良くして日本に貢献した」と好意的だった。

■「匹敵しない」
 反対の理由で目立ったのは、“モリカケ桜”など、安倍政権下で相次いだ疑惑や不祥事だった。

 土佐市の40代男性公務員は「加計学園問題は自分の友人を優遇して、森友学園問題では財務省の公文書改ざんで職員が自殺した。問題がうやむやのままで、税金を使う国葬ってどうなの?」と納得がいかない様子。

 「自民党葬でいい」とする高知市の50代自営業男性は「国民のコンセンサスが得られていない。田中角栄氏も日中国交正常化とか功績があるが、最後に(ロッキード事件などの)問題があって国葬じゃなかった」と指摘した。

 南国市の60代パート女性は「国葬にする理由が曖昧で情緒的。冷静に功罪を考えるべきだ」と強調。東洋町の30代男性自営業も「安倍氏の死を政治利用して、自民党のイメージアップをしようとしている意図を感じる」といぶかった。

 黒潮町の60代女性会社員は、銃撃事件の容疑者が安倍氏と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係に言及していることから「宗教団体との関わりがはっきりしないままの国葬はもやもやする」と話した。

 土佐市の60代男性会計年度任用職員は、1967年に国葬だった吉田茂氏と比較し、「吉田氏は戦後の混乱の中で復興へ尽力した点で評価できるが、安倍氏の業績が匹敵するとは思えない。そもそも『国葬』は明治憲法下で行われていた制度。戦後民主憲法と相反するものだ」と反対した。

安倍晋三元首相銃撃事件のニュースが県民に衝撃を与える中、国葬の是非については賛否が分かれた(8日、高知市知寄町2丁目のベスト電器高知本店)

安倍晋三元首相銃撃事件のニュースが県民に衝撃を与える中、国葬の是非については賛否が分かれた(8日、高知市知寄町2丁目のベスト電器高知本店)

■「生活が大変」
 安倍氏への評価が二分する中で、国葬に国費を投入することへの異論も多い。

 四万十市の60代パート女性は「立派な人で気の毒な亡くなり方をしたが、新型コロナウイルス禍で(国民の)生活が大変な中、税金を使うのはどうなのか」と疑問視。

 高知市の20代男子大学生は「1人暮らしで学費や生活費が苦しい。物価高だし、同級生も生活に困っている。なんで国費から出さないかん」と反発。同市の60代女性非常勤職員は「本当に安倍さんを心から思う人がクラウドファンディングでやればいい」と突き放した。

 賛否について「どちらともいえない」と回答した仁淀川町の30代自営業男性は「自分らには判断材料がない。もし事件でなく、普通に亡くなっちょったら国葬にならんかったかな、とも思う」と話した。

 高知市の40代男性団体職員は安倍氏の外交の功績を認めつつ、こう投げ掛けた。

 「税金が投入される国葬に抵抗感があるなら、それこそ『国民投票』を実施すればいい。その結果で(政府は)国葬に値するかを判断してほしい」(本紙取材班)

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