2021.07.19 08:37
ただ今修業中 県eスポーツ協会広報・池七海さん(27)高知市
「eスポーツに性別も年齢も障害も関係ない」と力を込める池七海さん(高知市はりまや町1丁目)
「ぜひ一緒にバトルに参加して!」
自宅からユーチューブで生配信しながら、インターネットを使った戦闘ゲームへの参戦を呼び掛ける。間もなく、2人の視聴者が仲間に加わった。
ゲームは、3人1チームの計20チームによる生き残りバトル。試合が始まると、銃などの装備を拾い集めながら遭遇した敵チームと交戦する。
「武器はここで集めておこう」
「後ろから敵が来てる! 前に攻めよう!」
オンラインで通話しながら戦略を立てていく。この日は、仲間を入れ替えながら計6人とゲームを楽しんだ。
初めて一緒にプレーする人もいれば、常連さんもいる。いずれも実際には会ったことのない人ばかりだが、「敵に勝ちたいという気持ちはみんな同じ。会ったことがあってもなくても全然関係ない」。
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ゲームとの出合いは、高校3年の卒業間際だった。友人宅で「1回やってみる?」と戦闘ゲームに誘われた。
「実際にやってみたら、銃を撃って敵を倒すのがすごいストレス発散になって」
すぐに家庭用ゲーム機「プレイステーション3」を買った。気軽にオンラインで友人とつながれる手軽さ、敵を撃って勝った時の爽快感。気の合う友人とプレーすれば、延々とゲーム画面に向き合った。
ゲーム好きが高じて、2014年からは「なな姉」の名前で、ゲーム実況を中心としたユーチューバーとして活動。飾らない性格も視聴者に受け、5年ほどで登録者は2万人を超えた。
「(コメント欄などで)視聴者とやりとりすると、おじいちゃんでも(人気ゲームシリーズの)『ファイナルファンタジー』や格闘ゲームをやっている人がいて。eスポーツは本当に老若男女が関係なく楽しめるんです」
その発信力に目をとめた県eスポーツ協会(高知市)からの依頼で、18年の協会発足時から広報を担当する。
県内でも城山高校(香南市)で四国初となるeスポーツの部活が今年から始動するなど、裾野は徐々に広がっている。その一方、ゲームを巡っては、過剰な利用が引きこもりや睡眠障害などを引き起こすとの懸念も根強い。
そういった声に対し、思い起こすのがオンラインゲームを通じて知り合ったある男子中学生だ。オンラインで会話すると、いじめに遭って不登校になったと明かしてくれた。
「その彼もゲームのことならば普通に人と会話ができる。何度も一緒にゲームをしているうちに、人間不信が少し解消できたのか、少しずつ学校にも行けるようになって。ゲームって、そういう子たちの居場所にもなる」
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好きな言葉
当面の課題は、ゲーム業界にも存在する女性軽視の風潮をなくすことだ。「『女か。一緒にやるのは嫌』と中傷されることがよくある。オンラインゲームで性別を隠す女性も少なくない」と残念がる。だからこそ、自身の活動が、ゲーム業界に対する女性のハードルを下げることにつながればと願う。
「もっと女性プレーヤーを増やして、高知でも女性のeスポ大会を開きたいですね」
写真・土居賢一
文・安岡仁司