2017.02.14 08:00
大流通を追って 消えないカツオ(11)難食材つなぐシステム
例えば、高知県外の産地では「カツオは足が早い魚」という見方が強いこと。
長崎県庁や同県の水産試験場でカツオの話を切り出すと、「ほかに魚はいくらでもある。傷みやすい魚をわざわざ重視して食べることはない」という。
宮城県気仙沼市の卸売業者はこう言った。「温度管理をきっちりしないと。カツオは質が落ちやすい」
「取り扱い困難」のこの魚を、沖で釣って食べ、全国からも一年中集める高知県の人とは何なのか。不思議な感慨を抱いた。
カツオを水揚げする所には必ず、土佐船の姿があることも再認識した。高知県から出港し、漁場を渡り歩く一本釣り船だ。
漁船から市場へ、卸商からスーパーのバイヤーへ。電話一本で釣った量や値段が伝わり、次々に競られ、運ばれる素早さにも息をのんだ。
釣れて2日後に九州から高知の店へ、高知からは1日で名古屋市の店へと流れた。
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高知県などを巡る大流通は、いつごろ生まれたのか。
高知市の卸売会社「土佐魚類」の森国一さん(59)は、瀬戸大橋の開通と高速道路網の整備に合わせて1990年代に確立されたとみる。
この少し前、高岡郡中土佐町などの業者は真空パックのカツオのたたきを商品化し、東京に販売。故青柳裕介さんの漫画「土佐の一本釣り」が連載されたのもこの時代だ。