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2024.05.18 08:00

小社会 2枚の地図

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 「旅する巨人」とも呼ばれた民俗学者、宮本常一の古里を過日、訪ねた。山口県の周防大島。瀬戸内海に浮かぶ島の海沿いに記念館はある。

 最初の展示パネルは生涯かけて歩いた彼の足跡を年代ごとにたどる。赤や青で印(しる)された旅の痕跡は列島の地図を塗りつぶす。「日本列島の白地図に宮本の足跡を赤いインクでたらすと日本列島は真っ赤になる」と彼の恩師が語った言葉が大げさではないことを実感させる。

 宮本の鼓動が聞こえるような地図を眺めながら、ふとそれとは全く違う無機質な日本列島の地図が脳裏をよぎった。

 将来的に「消滅の可能性がある」と人口戦略会議が見なした744市町村の一覧。そのデータを基に描かれたグラフィック地図だ。「消滅」の可能性の強弱が色の濃淡で表現されており、日本列島は寒色のまだらに染められていた。

 同会議の報告書をめぐっては「日本全体の問題を自治体の問題であるかのようにすり替えている」といった反発もある。自治体の内発的な振興策をしっかりと支える国の施策がない限り、そのまだらは解消されるはずもない。

 「国がゆたかになるということは隅々にまでゆたかになることでなければならない」と訴えた宮本が没して40年余り。生涯をたどった記念館の最後のパネルには直筆のメモで「われわれは本当に郷土を知っているだろうか」。その問い掛けは「古里の豊かさを掘り返せ」という伝言のように思えた。

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