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2024.05.16 08:00

【陣営の選挙妨害】自由との兼ね合い議論を

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 有権者と候補者が触れ合う場となる街頭演説を過激な行為で妨害することは容認できない。一方で、過度に規制すると、多様な意見と接する機会が奪われてしまう。選挙運動の自由を守るにはどうすればいいか、慎重な議論が求められる。
 衆院東京15区補欠選挙を巡り、警視庁は公選法違反(自由妨害)の疑いで政治団体「つばさの党」の事務所などを家宅捜索した。別陣営の街頭演説を繰り返し妨害したのは悪質と判断した。候補者を出した陣営が他陣営の選挙妨害で強制捜査を受けるのは異例だ。
 代表や元候補ら3人は補選期間中、他陣営の街頭演説会場の周辺で演説に重ねるように拡声器などを使って大音量で主張を訴えた。また街宣車を車で追いかけて交通を妨げるなどして、選挙活動を妨害した疑いが持たれている。複数の陣営が被害を訴えていた。
 告示日に他陣営が街頭演説中、近くで大音量の演説をするなどした行為が公選法に抵触するとして、警視庁は投開票日前に3人に警告を出していた。警告後も妨害を繰り返した疑いがあるとみて捜査している。これらの行為を受けて、街頭演説の事前告知の取りやめや、会場を変更した陣営もあったようだ。
 公選法は、選挙に関する集会や演説を妨害した場合、4年以下の懲役もしくは禁錮か、100万円以下の罰金が科される。最高裁判決は「聴衆がこれを聴き取ることを不可能または困難ならしめるような行為」を演説の妨害と認定している。
 家宅捜索を受けた代表は「表現の自由の中で適法にやっている」との認識を示す。今後も同様の活動を続けると主張している。これに対し、過激な行為の排除を求める声が上がる。与野党双方から規制の強化へ公選法改正の必要性が訴えられる。
 ただし、規制強化は自由な活動を制約しかねない。憲法が保障する表現の自由も絡む。規制の負の側面は無視できない。現行法で対応できないか探ることが大切だ。
 やじを巡っては、2019年の参院選で、北海道警が安倍晋三首相(当時)の街頭演説中にやじを飛ばした男女を排除した事例がある。2人が道に損害賠償を求めた訴訟は、札幌地裁が排除の違法性を認め賠償を命じ、札幌高裁は1人の賠償命令を取り消した。離れた場所にいた2人の状況で判断は分かれている。
 何が認められ、どの行為は許されないと判断されるのか、線引きは簡単ではない。安易な規制強化は政権批判などを排除する運用や、言論を萎縮させる恐れが指摘される。
 安倍氏銃撃事件や岸田文雄首相襲撃事件を受け、演説会場の警備強化が続く。一方で新型コロナウイルス禍が落ち着き、選挙期間にとどまらず、有権者と政治家が対面で接する機会が戻ってきている。
 多様な意見の表明は民主政治の根幹となる。政治的言論の自由が制限されないように注意しながら課題と向き合う必要がある。有権者にとっても重要な問題だ。

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