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2024.04.20 05:00

【柏崎刈羽原発】住民の不安と向き合え

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 住民の不安、不信に正面から向き合うつもりがあるのだろうか。東京電力が柏崎刈羽原発(新潟県)7号機について、再稼働の条件である地元同意を得ないまま、核燃料の装塡(そうてん)を始めた。
 東電側は「検査の一環」としているが、燃料装塡は原子炉起動の直前に行う主要な準備作業に当たる。2011年の福島第1原発事故以降に再稼働した6原発12基の中で、地元同意の前に作業を行ったケースはなく、異例の対応だと言ってよい。
 柏崎刈羽原発を巡って東電は、不正行為や対応の不備で事実上の運転禁止命令を受けるなど、住民不信を招いてきた。それを踏まえれば、より丁寧で慎重な手続きが求められるはずだ。加えて、1月の能登半島地震を受けて新しい課題も浮上し、対応を迫られている。
 その中で、再稼働に前のめりになっているように見える東電の姿勢は、乱暴だと言わざるを得ない。追認している政府の対応も同様だ。不安の払拭と安全性の確保を優先するべきだ。
 柏崎刈羽原発は東日本大震災後、12年3月までに全基が停止。17年に6、7号機が原子力規制委員会の審査に合格した。
 しかし21年1月以降、テロ対策の不備が相次いで判明。原子力規制委から、事実上の運転禁止命令を出された経緯がある。昨年12月、改善が確認されたとして命令が解除されたことを受け、東電が再稼働の動きを加速させた。
 東電側は、原発の廃炉や賠償など巨額の費用負担を抱え、原発再稼働を急ぎたい事情がある。1基稼働すれば年間約1100億円の収支改善が見込めるとされる。地元に早期稼働を求める声があるのも確かだ。
 政府も、電力需給の逼迫(ひっぱく)や電気代が高騰しやすい状況の早期解消へ、原発再稼働を重視する。経済産業省は3月、花角英世新潟県知事らに再稼働の同意を要請。今回の燃料装塡に関しても「再稼働そのものではない」と理解を示している。
 しかし、規制委の運転禁止命令では、東電の「原子力事業者としての適格性」までもが疑われた。住民に根付く不信感は極めて大きい。
 また、能登半島地震では避難道路が寸断され、原発事故と自然災害が重なった場合の課題を露呈した。国が求める「屋内退避」に必要な家屋の倒壊も多発。これらも理由に花角知事は同意を保留し、民意を問う手段にも言及している。
 こうした中で、燃料装塡に踏み切ることを住民が疑問視するのは当然だ。東電、政府とも「地元への丁寧な説明」を強調してきただけに、言動のギャップが鮮明になる。住民の神経を逆なでし、かえって地元同意が遠ざかるのではないか。
 そもそも政府は、国民的な議論を経ることなく原発回帰の方針に転じた。過酷事故を経験したにもかかわらず、安全性確保よりも安定供給に傾く形になり、国民の不信を招いている。合意形成を軽視するような進め方は改めていく必要がある。

高知のニュース 社説

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