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2024.04.11 05:00

【機能性表示食品】制度の検証が必要だ

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 小林製薬(大阪市)の「紅こうじ」サプリメントを巡る健康被害問題を受け、商品に利用されていた機能性表示食品制度の課題が浮かび上がってきた。
 制度は2015年、健康食品市場が拡大する中、規制緩和による成長戦略の一つとして、当時の安倍晋三政権が導入した。
 健康食品は通常、医薬品のように効能や効果をうたうことはできないが、機能性表示食品は、安全性と効果を示した科学的根拠を企業が販売前に消費者庁に届け出れば、効果を表示できる。特定保健用食品(トクホ)とは異なり、国は安全性データを審査しない。
 今回のサプリも、「悪玉コレステロールを下げる」という効果を示して販売され、健康の改善を期待した人が大勢購入していた。ところが、その商品で腎機能障害などの被害が相次いだ。死者も報告され、制度の在り方に不安が広がっている。
 機能性表示食品は国の審査はないが、届け出された情報が消費者庁のサイトで公開されている。消費者自らが確認できる仕組みだ。
 しかし、内容をどれほどの人が理解できるだろうか。専門知識のない消費者に判断を委ねるのは無理がある。
 効果をうたっておきながら、安全管理の規制も厳格でない面がある。医薬品の製造工場は、品質や衛生管理に関する指針「GMP(適正製造規範)」の認証が必須だが、サプリは任意となっている。小林製薬のサプリ原料を製造した工場も取得していなかった。
 健康被害が生じた場合の報告の基準にも不十分さがあったのではないか。届け出のガイドラインでは、発生や拡大の恐れがある場合は、消費者庁へ速やかに報告することを企業に求めている。しかし、義務ではなく、今回も急速に被害が広がる恐れがあるにもかかわらず、把握から公表まで約2カ月かかった。
 機能性表示食品制度は健康食品市場の拡大に貢献すると期待され、中小企業も相次いで参入してきた。今年3月時点での届け出は約6800件に上り、国内市場は18年からの5年間で3倍超となる6865億円にまで膨らんでいる。
 市場が拡大している分、健康被害が出れば影響は大きくなる。消費者団体や日弁連などは制度ができた当初から、安全性が事業者任せだと問題視してきた。
 今回の健康被害の拡大についてはいまだ不明な点も多く、まずは実態把握と原因究明が急がれる。併せて、企業任せの制度の在り方や導入時の論議が十分だったのか、きちんと検証するべきだ。
 今回の事態を受け消費者庁は、5月末をめどに制度の在り方について取りまとめるという。3月時点で届け出のある約1700事業者を対象に行っている緊急点検の結果を踏まえて議論するとともに、近く専門家による検討会も立ち上げる。国は健康被害を真剣に受け止め、誠実に対応する必要がある。

高知のニュース 社説

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