2024.04.11 05:00
小社会 名字の多様性
県内に住んでいれば、これらの名字にさほど珍しさは感じないが、県外ではやはり聞き慣れない響きなのだろう。ましてや、遠方との行き来がほとんどない時代ならなおさらだ。
今、日本にはおよそ12万もの名字があるとされる。その一つ一つが一族のルーツだったり、祖先の住んでいた場所やその地形を表したり。名字の多さはそのまま日本や地域の伝統、文化の多様性を示しているといっていい。
そんな名字について、にわかに信じがたいニュースが過日の本紙に載った。500年後には日本人の姓が佐藤だけになるという。結婚時に夫婦どちらかの姓を選ぶ現在の制度が続くなら、という条件付きの推計ではあるけれど。
選択的夫婦別姓を考えるきっかけにとの狙いというが、国会での議論は全く進んでいない。財界も早期の実現を求める一方、伝統的な家族観を重視する層の反対は根強いままだ。
あちらを立てればこちらが立たず。時の流れの中でどう伝統を残すかは難しいテーマだ。次世代に多様性を伝えるには、現実を踏まえた議論を深める必要がある。もし本当に佐藤さんだけになったとしたら…。想像しただけで何とも不便な世の中ではある。