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2024.03.06 08:00

小社会 「らんまん」の源流

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 民俗学者の宮本常一を描いた演劇「地を渡る舟」が2、3の両日に愛知県豊橋市で上演された。特急「南風」と新幹線を乗り継ぐ片道5時間の遠出だったが、そのかいある素晴らしい公演だった。

 上演前、脚本を書いた長田育恵さんには一抹の不安があった。「地を渡る舟」は長田さんが主宰する劇団「てがみ座」によって2015年に上演された。在野の研究者であった宮本常一を軸に据えた群像劇である。

 今回は「穂の国とよはし芸術劇場」の「市民と創造する演劇」として行われた。つまりプロではなくアマチュアの役者によって演じられるのだ。そこに長田さんの不安があった。作品の主題は民俗学であり、派手な踊りや立ち回りなどの活劇があるわけではない。役者たちの濃密なせりふを積み重ねた重厚長大な劇作の上演時間は2時間半にも及ぶ。

 その不安は全くの杞憂(きゆう)であった。役者たちの熱演は胸に迫るもので、舞台美術と音楽も美しく洗練されたものだった。そこには「市民演劇」の成功というものを超えた見事な舞台芸術があった。

 民俗学とは何か。宮本は言う。〈わしが受け取ってきたんはな、人が生き延びてきた意志じゃ〉。遍歴を貫く宮本は批判も受ける。〈あなたは自分で、さんざ好き勝手に歩いてるんです。その方が、あなたが楽しいから〉。

 植物分類学とは何か。牧野富太郎博士を軸にした群像劇であった「らんまん」の源流を見た。

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