2024.02.05 07:00
大人は子どもを頼って 能登半島地震・尾木直樹さん
教育評論家の尾木直樹さん
石川県輪島市は母が生まれた家があり、親戚もいる僕のルーツです。今回の地震では親戚は無事でしたが、母の生家のある北西部の門前町皆月は大きな被害を受けました。
能登の人々は絆が強く、地域のつながりを大事にしてきました。だから人が集まる正月に起きた地震で甚大な被害が出てしまった。お正月気分でテレビを見たり、くつろいだりしていた中で、天国から地獄に突き落とされるほどの衝撃だったのではないでしょうか。
子どもたちも非日常の中にいます。まずは日常の回復に注力すべきです。
その意味では中学生の集団避難はタイミングが良かった。親は心配でしょうが、心理的に親離れが始まる思春期において、友達の存在は絶対的といえます。普段を知る先生がそばにいるのも大きい。先生の人事異動を凍結する特別措置を取るなど、子どもたちがこれまで通りの生活を送る環境を整え、復興へのパワーを養ってもらいたい。
子どもたちが安心して日常を送るためには、先生を支える仕組みづくりも不可欠です。
周囲の大人は子どもの力を信じてください。守るだけでなく、頼りましょう。掃除でも何でもいい。自分も役に立てると実感できるように、周囲から感謝の言葉をかけられるような役割や、自信を持って輝ける場を提案してみましょう。
これからを生きる子どもたちの意見や感覚は重要です。大人になった時、どんな能登にしたいのか、未来の展望を語れるのは子どもたちです。だから遠慮なく発信してほしい。君たちの声や、発想、力が能登を復興させます。期待しています。(教育評論家)
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おぎ・なおき 1947年滋賀県生まれ。「尾木ママ」の愛称で知られる。法政大名誉教授。臨床教育研究所「虹」所長。