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2024.01.18 08:00

【2024春闘】好循環へ賃上げ持続を

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 2024年の春闘が間もなく始まる。23年春闘は歴史的な物価高の中で高水準の賃上げが実現したが、一過性に終われば、経済の好循環を目指す流れに水を差す。労使とも転換期との認識は共有しており、ふさわしい対応が求められる。
 23年春闘での賃上げ率は、経団連会員の大手企業平均で3・99%、連合傘下の労組平均で3・58%となり、いずれも約30年ぶりの高い水準となった。
 ただ、物価と所得がともに上がっていく経済の好循環には、持続的な賃上げが欠かせない。厚生労働省の統計によると、物価変動を加味した昨年11月の実質賃金は前年同月比3・0%減で、20カ月連続のマイナスとなった。昨年行われた各種世論調査でも、生活の苦しさを訴える割合は増えている。
 生活者側が物価高を上回る賃上げを求めるのは当然だ。連合は24年春闘の賃上げ目標を「5%以上」と設定。23年の「5%程度」から一歩踏み込んだ。
 賃金が伸び悩めば消費が冷え込んで企業業績が悪化し、賃上げがさらに厳しくなる悪循環も招きかねない。「デフレからの完全脱却」を掲げる経営者側にとっても、賃上げは最重要課題の一つになる。
 経団連は24年春闘の交渉指針を決め、賃上げへ「23年以上の意気込みと決意」で臨むとした。昨年は、連合の目標を「実態から乖離(かいり)している」とけん制したが、今年は理解を示した。労使が方向感を共有しているのはプラス材料だろう。
 法人企業統計によると、企業側は好業績を背景に内部留保を増やしており、22年度は554兆円で11年連続で最大を更新した。23年度上半期も同様の勢いが続く。マクロで見れば賃上げに対応できるはずで、積極姿勢に期待したい。
 ただ、業績好調な大企業だけが対応しても不十分だ。労働者の7割近くを雇用する中小企業にいかに波及させるかが、やはり課題になる。
 連合の23年春闘の集計では、従業員300人未満の企業の賃上げ率は3・23%で、22年の1・96%から大きく上昇した。中小企業が多い本県の賃上げ率(連合高知調べ)も前年より1・3ポイントほど伸びており、賃上げの流れが中小や地方にも一定、波及したことがうかがえる。
 しかし、日本商工会議所の調査では、23年度に賃上げした中小企業は6割強で、このうち「業績が改善している」としたのは2割にとどまった。人材確保や物価高などを背景に、厳しい経営でも無理して賃上げしている現実が浮かび上がる。継続的な賃上げが難しい企業も少なくないとみられる。
 やるべきことは明確だ。中小企業は大企業との取引時、原材料費や燃料代などコスト上昇分を価格に転嫁しにくい。改善の必要性が言われながら、なお中小側から不満の声があがる。大企業側と政府は対応を徹底するべきだ。企業の生産性向上や優遇税制など、賃上げの環境づくりを引き続き支援する必要もある。

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