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2024.01.11 08:00

【新年に 地方】地域の意欲を支えたい

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 高知県のような地方の人口構造を見れば、人口減少にあらがえないことは明らかだ。だがデータが更新されるごとに、その減少ペースは想定を上回り、厳しさが鮮明になる。
 国立社会保障・人口問題研究所が昨年末、直近の国勢調査(2020年実施)に基づき、2050年時点の人口推計を公表した。20年比で、東京以外の道府県は減少し、11県は減少率が30%超だった。
 高知県にも厳しい推計が出た。減少率は全国で4番目に大きい34・8%で、69万2千人が45万1千人になる。5年前の前回推計より、45年時点の人口ベースで1万人減っており、減少ペースは鈍化するどころか加速している。
 4市町村は60%以上の減少率だった。過疎自治体からは、諦めに近い声が上がる。集落の消滅が現実味を帯びてくる。
 ただ、人口が減っても存在し続けようとする住民の意欲や意思がある限り、支えていく必要がある。地域の生きがいや暮らしやすさを追い求めたい。その先に人口減少の鈍化、持続可能な集落への道が開ける可能性も出てくる。
 地方対策を巡る国策に特効薬のようなものはないだろう。安倍政権が14年、地方創生の取り組みを本格化させたが、東京一極集中の流れを変えることはできなかった。
 岸田政権は「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、技術で地方と都市の格差を埋めようとするが、施策の方向性自体に新味はない。そこに「異次元の少子化対策」を重ねようとしているが、効果は未知数だ。
 国の支援の拡充は重要だが、地方が機動的に手を足し、実効性を上げていく必要がある。
 本県は、独自に集落活動センター事業を展開するなど、中山間地域対策は先進的に取り組み、一定の成果を上げてきたといえるだろう。
 しかし、少子化対策という切り口に限れば、最重要課題であったにもかかわらず後れをとった。一昨年の出生数は3721人で過去最少かつ全国最少だった。対策で重要な「若い女性の実数」の指標を意識していなかったことが一因とみられる。
 浜田省司知事は1期目最終年の6月になってようやく「人口減少対策のギアを上げる」と表明した。また県は「10年後に年間移住者数5千人以上」などの目標を盛り込んだ中山間振興ビジョンをまとめた。野心的な目標は、達成してこそ評価される。残された時間は長くない。速やかな成果が求められる。
 行政が伴走支援しても、住民の主体性がなければ持続可能な地域づくりは難しい。その活動は地域の実情にあった形であるべきであり、それぞれの地域で「正解」を模索することになる。
 昨年末に県内で講演した、愛媛県今治市でサッカークラブを運営する岡田武史さん(元日本代表監督)は「感情を共有できる地域コミュニティーが地方の資産だ」と説いた。遠回りでもコミュニティーの再構築から取り組みたい。

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