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2024.01.11 08:00

小社会 八代亜紀さんの訃報

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 昭和50年代のテレビは歌番組が盛況だった。情感のあるハスキーな歌声。八代亜紀さんの「舟唄」もよく流れてきた。〈♪肴(さかな)はあぶった イカでいい〉。小学生だった小欄も意味も分からず口ずさんだ。

 作詞した阿久悠さん著「愛すべき名歌たち」には、もとは美空ひばりさんの歌唱を想定して書いた詞とある。ただ、こう続く。〈この歌を歌う八代亜紀は絶品である〉。

 その唯一無二の歌声にも逸話がある。熊本から上京。銀座のクラブ歌手を経てデビューした。だが、売れずに2年の地方回り。「10週勝ち抜けなかったら歌手をあきらめる」と決意し、スターへの登竜門的なテレビ番組に出た。

 審査員は厳しい。淡谷のり子さんには「その声が嫌い」と言われ続けた。やっとほめられたと思ったら、「スタイルがいいわね」。13年前、学生を前にした対談で笑って明かしている(原武史編「歴史と現在」)。

 絵画も幼い頃から絵筆を握った実力派。12年前には高知大丸で個展を開き、「歌が命で、それを支える精神が絵」と本紙記者に語っている。近年、震災や豪雨が続いた古里もその命と精神で随分励ましていたようだ。

 急な訃報に驚いた。〈♪ほろほろ飲めば、ほろほろと〉。先の対談で心にしみる日本語を学生に聞かれ、八代さんは「舟唄」を挙げた。「大人になってくると分かるものなんです」。小欄もようやく分かる年齢になったが、やはり昭和は遠くなる。

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