2023.12.28 05:00
【学術会議改革】独立性が揺らぎかねない
学術会議の在り方を検討している内閣府の有識者懇談会が「国とは別の法人格を有する組織になることが望ましい」などとする中間報告をまとめた。「国の特別機関」からの転換を意味する。
併せて学術会議の独立性を重視。会員選考の透明性を高めつつ、政府が選考プロセスに一切関わらないスタンスが基本的に妥当とした。
提言を踏まえ、政府は会員選考や法人運営に外部識者を関与させる仕組みを検討している。だが、これには慎重な姿勢が要る。外部識者の関わり方によっては学術会議の独立性が揺らぎかねないからだ。
そもそもいま、見直しを急ぐ必要性はなく、任命拒否問題の批判をかわすための論議との見方が根強い。政府はまずは拒否理由を説明し、その是非から論議すべきだ。
1949(昭和24)年に発足した学術会議はさまざまな専門分野から選ばれた科学者210人で構成。政府に対し、科学者組織として中立の立場で提言や勧告などを行う。
その前提となってきたのが、科学者の戦争加担への反省と平和貢献への誓いである。独立性を保つ意義もそこにある。
会員は任期6年で、日本学術会議法に基づき、学術会議側が候補者を推薦し、首相が任命する。これまでは推薦通り任命されてきた。
ところが2020年の改選で、当時の菅義偉首相が候補者6人の任命を拒否。いまの岸田文雄政権にも引き継がれている。
学術会議側は拒否理由を示すよう求めてきたが、政府は「首相の判断」の一点張りで、いまだに説明していない。6人は過去、安保法制などに反対した経緯があり、それが理由とみられる。
政府の政策に異を唱える者は会員として認めないと言っているに等しい。学術会議はいわば学術顧問集団であり、時に政策の問題点を指摘してこそ存在意義がある。
法人化は運営費の確保などに課題はあるが、うまく制度化すれば独立性を高められる要素がある。しかし政府が介入できる制度になれば、法人化の利点もなくなる。
政府は昨年、学術会議を国の機関として維持したまま、会員選考に第三者を関与させる法改正案の国会提出を目指した。学術会議側の猛反発で断念したが、今度は法人化にかじを切った。学術会議をあの手この手で揺さぶっているように映る。
背景には、学術会議が軍事目的の研究に一貫して反対していることもあるとみられる。だが、軍学共同を否定し、政府と一定の距離を取るのは、過去の反省に立つ科学者集団の良識である。
学術会議側も会員選考や運営の透明性を高める努力が求められるが、政府が学術会議の歴史や意見を無視し、強引に見直しを図ることがあってはならない。