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2023.11.23 08:00

【北朝鮮軍事衛星】緊張を高める発射強行

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 東アジアの安全保障環境を不安定化させる挑発行動は許されない。対立を先鋭化させず、緊張緩和を探る対話を重視するべきだ。
 北朝鮮の朝鮮中央通信は軍事偵察衛星打ち上げに成功したと報じた。地球周回軌道に進入させたとする。日本政府は成否を分析している。
 弾道ミサイル技術を使った衛星の発射は国連安全保障理事会決議に違反するとして中止を求められながら、強行した。米政府は、今回の発射が大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発に関連するとの見方を示した。韓国は緊張緩和に向けた南北軍事合意の効力を一部停止し、軍事境界線付近での偵察・監視活動を復活させる。
 北朝鮮は複数の偵察衛星を運用することで、米韓軍事動向の常時監視を目指している。早期に複数を追加発射すると主張している。安全への警戒が怠れない。
 北朝鮮は人工衛星を打ち上げる期間を通報していたが、前倒しで実施した。発射された1発が分離し、一部は沖縄本島と宮古島上空を通過した。沖縄県を対象に全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令された。住民に避難を呼びかけ、公共交通に影響がでた。
 打ち上げが安保理決議違反とされる問題の重大性は言うまでもない。さらに自らが通告した時間まで無視して、住民生活や船舶の安全運航などへの影響を意に介さない傍若無人ぶりだ。被害情報が入っていないのは幸いだが、国際社会を混乱させる身勝手な振る舞いは容認できない。
 通告時間外の発射は日本側も不意を突かれる形となった。政府の危機対応に油断やほころびはなかったか、検証が欠かせない。
 北朝鮮は5、8月に打ち上げを試みたが失敗した。10月中にも再実施の予定だったが見送っていた。9月には金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記がロシアを訪問し、極東の宇宙基地でプーチン大統領と会談している。
 ロシアはウクライナ侵攻が長期化し、武器や弾薬の不足が伝えられていた。北朝鮮がそれらを提供する見返りに、ロシアが弾道ミサイルに転用可能なロケット技術を供与する可能性が指摘された。ロ朝の軍事協力は、東アジアの安保環境を一段と複雑化させる危惧を強める。
 中国はロシアとともに北朝鮮を擁護する姿勢を貫く。米国による北朝鮮への軍事圧力や制裁が朝鮮半島情勢に緊張を与えているとして、米国の姿勢を問題視する立場をとる。
 米中対立が激しくなる中で、中国が対米姿勢を軟化させることは困難とみられる。ただ、北朝鮮がロシア寄りの姿勢を強めれば地域の緊張が高まりかねず、中国の負担もまた重くなるはずだ。政治的解決に向けた対話の重要性は増している。中国は役割の大きさを受け止め、責任ある対応が求められる。
 日米韓は発射を安保理決議違反だと強く非難した。ミサイル発射や核実験などさらなる行動が想定される。3カ国の連携を緊密にして地域の安定化に取り組む必要がある。

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