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2023.11.11 08:00

【補正予算案】ちぐはぐ感が拭えない

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 物価高に苦しむ家計の支援は急務だとしても、借金に依存した大盤振る舞いの付けは将来、重い負担となって返ってくるのではないか。生活の実感とかけ離れた「デフレ脱却」の掛け声と相まって、大規模な財政出動にはそんな不安を覚えずにはいられない。
 政府が、経済対策の裏付けとなる2023年度の一般会計補正予算案を閣議決定した。歳出は13兆1992億円という高水準で、歳入の7割近くを国債の増発で賄う。新型コロナウイルス禍や物価高で膨張した財政運営が続けば、その健全化どころか、平常化さえ危うい。
 経済対策は5項目の柱で構成する。物価高対策や賃上げ、半導体などの国内投資促進、人口減少対策、防災・減災だ。ガソリンなどの燃油と電気・都市ガス代の抑制に充てる補助金の追加分のほか、半導体関連の支援では特別会計分を含め2兆円規模を確保した。
 岸田文雄首相が旗を振る所得税と住民税の減税は24年6月からの実施で補正予算案の枠外となるが、減税の恩恵が及ばない低所得世帯に7万円を給付する費用は盛り込んだ。全体的にばらまき色が濃い。
 政府は、物価高で消費が落ち込めばデフレ経済に後戻りする恐れがあるとして、賃上げの継続を確認できるまで、減税と給付で消費を下支えするとの立場を取る。ただ、物価に賃金が追いつかない現状では、理解しにくい面がある。
 内閣府は今年4~6月期に日本全体の「モノ余り」が3年9カ月ぶりに解消したと分析。需要が増えれば価格が上がりやすい環境にある。そうした状況で需要を喚起すれば、さらに物価の上昇圧力を強める可能性もあろう。
 歳出規模が過剰になれば、そうした流れに拍車をかける懸念がある。しかし、自民党内では経済対策の検討段階から「規模ありき」の雰囲気が漂っていた。衆院の解散・総選挙をにらんだアピールの側面もあったのではないか。内容でも規模感でもちぐはぐな印象が拭えない。
 さらに「大義」も揺らいでいる。岸田首相はこれまで、コロナ禍からの景気回復で上振れした税収分を「減税で国民に還元する」と説明してきた。だが、増収分は既に使用済みで残っていなかった。結局、大規模な経済対策を裏付ける財源は国債の増発だった。
 政府は6月の「骨太方針」で「歳出構造を平時に戻していく」と明記したが、早くも空文化した格好だ。国の借金である国債残高はコロナ前の18年度末から約2割膨らんで1千兆円を超えており、今回の国債増発でさらに膨らむ。厳しい現実を直視するべきではないか。少なくとも借金頼みで大盤振る舞いをする余裕はどこにもあるまい。
 10月の世論調査では、日本の財政に不安を感じる人が8割を超えた。経済対策への期待が高まらない一因だろう。政府は補正予算案の審議を通じ、財政健全化への道筋についても国民に説明する責任がある。

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