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2023.10.24 08:00

小社会 悪役にされた男

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 福島第1原発の大事故を描いた「Fukushima50」と題する映画がある。事実に基づくとうたう作品は、上映当初から感動を呼んだ。

 忘れられないのは、現場との対比で描かれる当時の首相の姿。菅直人首相を指すことは明白だ。時に怒鳴り、現場の作業を止め、圧力をかける。映画とは得てしてそうしたものだが、事実で見れば改変は多い。

 まず1点。首相の視察がベントと呼ばれる重要作業を止める。悔しがる現場のシーンは印象的だ。しかし実際は、数ある記録、会議録、当事者の証言を読んでもそうした事実はない。時系列も合わない。むしろ首相が「早くやってくれ」と明言したことでベント実施に踏み切られた節がある。

 海水注入にも官邸のストップがかかる。中断を命じた東電役員のセリフ、それに逆らった所長判断は本当だが、首相や官邸が止めたという事実も見当たらない。

 現場作業員の命がけの奮闘と努力。それも事実だが、ベントや海水注入が成功し、爆発を抑え込んだわけではない。なぜ原発は最終破局に至らず済んだのか。これは今なお理由不明だ。菅氏はのちに「幸運な偶然が重なる神のご加護があった」と語っている。

 日本をピンチに陥れた「悪役・菅直人」が政界を引く。今はただ、ご苦労さまでしたとお伝えしたい。真の危機下を知る元為政者として、フリーの立場での発信を願いたい。棺を覆い、時を経るまで評価は分からない。

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