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2023.10.24 08:00

【所信表明演説】説明尽くし論戦充実を

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 国民が直面する課題に、先送りせず必ず答えを出す不撓(ふとう)不屈の覚悟で取り組む。岸田文雄首相は所信表明演説で、こう決意を述べた。先頭に立って、職を賭して粉骨砕身取り組む覚悟とも表現している。
 意気込みは頼もしい。言うまでもなく、そのためにはまず国民への説明を尽くすことが求められる。国会審議の充実は不可欠だ。丁寧な説明と言いながら、その不足が内閣支持率が低迷する理由の一つと考えられる。政策への理解が得られなければ信頼は高まらない。
 政府は物価高に対応した経済対策を近くとりまとめる。首相は、急激な物価高に賃金上昇が追いつかない現状を踏まえ、税収の増収部分の一部を還元する考えを表明した。
 デフレ完全脱却のための一時的緩和措置と位置付けた。首相は既に所得税減税を含めた対策の検討を与党幹部に指示している。
 減税規模や期間の具体化はこれからだが、一定額を納税額から差し引く形が軸になるようだ。税収は景気に左右されるため期限付きとされる。低所得者らには給付での対応を検討するとみられている。
 ただ、物価高対策としての効果には懐疑的な見方が出ている。所得税減税には法改正が必要となり、即効性を欠く。ばらまき批判は根強い。減税検討の指示が衆参統一補欠選挙の投開票日直前だったため、選挙対策ともみられた。
 そもそも税収の上振れ分は財政の立て直しに振り向けるべきだとする意見もある。国債残高は1千兆円を超え、財政状況は厳しい。日米の金融政策の違いによる金利差の拡大で円安が進み、輸入物価が上昇している。財政の悪化で円への信認が揺らげば影響はさらに大きくなる。
 首相は所信表明演説で財政健全化には触れなかった。増税派のイメージが一部に広がったことを警戒したのかもしれない。だが、防衛力の抜本強化や少子化対策は予算規模が先走るものの、追加財源をどう調達するのかは定まらない。
 財政や国民負担の在り方は重要な論点となる。安全保障や原発政策は議論が深まらないまま方針転換した。国会軽視は許されない。
 経済に関して首相は、何より重点を置くと表明した。持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済をめざし、3年程度を変革期間として供給力強化に取り組むとする。地方は特に人口減少や担い手不足の課題がのしかかり、疲弊が進む。恩恵は広く行き届くよう丁寧な制度設計が求められる。
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は解散命令請求を行ったとし、被害の防止と被害者救済に言及した。さらに、政治との関係の解明を進めることが不可欠だ。
 衆参補選は与野党1勝1敗で、今後の政権運営は盤石とは言い難い。課題は多く、内政にとどまらない。安保環境が厳しくなる中、独自の外交スタイルが必要となる。正面から向き合い、内閣改造後初の本格論戦を充実させたい。

高知のニュース 社説

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