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2023.10.11 08:00

【イスラエル戦闘】犠牲をこれ以上広げるな

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 戦闘と犠牲の拡大、長期化が憂慮される。事態のさらなる激化を防がなければならない。外交努力と自制が不可欠だ。即刻停止へ国際社会の連携した対応が求められる。
 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘が激化している。双方で死者は民間人を含め1600人を超え、負傷者も多い。
 ハマスはイスラエルに向けて大量のロケット弾を発射したほか、数百人の戦闘員がイスラエル領内に侵入したとみられる。ガザとの境界付近で開かれていた野外音楽フェスティバルの襲撃で、250人以上の遺体が収容されたと伝えられた。
 イスラエルは報復空爆を行い、ガザでの被害が広がった。ハマスはロケット弾攻撃を継続し、イスラエル軍はガザ空爆を強化した。
 イスラエル南部ではハマス戦闘員とイスラエル治安部隊との銃撃戦が起きている。いずれも攻撃継続の構えで、ガザ情勢は一層の悪化は必至とみられる。
 ハマスはイスラエルの兵士や民間人を拘束し、一部をガザ地区内に連行したほか、イスラエル領内で人質に取っている。100人規模との情報がある。早期解放が不可欠だ。
 ハマスの動きを察知できず、奇襲を許して異例の人的被害を受けたイスラエルは、戦闘目標を激しく攻撃する地上攻撃に踏み切る可能性がある。ネタニヤフ首相は、目的完遂まで制限も中断もないとの姿勢を強調した。宗教政党や極右政党が参加するネタニヤフ政権は、対パレスチナ強硬姿勢を一段と強めそうだ。
 イスラエルはガザを「完全封鎖」し、食料や電気、燃料の遮断を宣言した。これに対し、ハマスはイスラエル軍がガザ市民を無警告で攻撃するたびに人質を殺害すると警告した。対立は一段と深まる様相だ。
 イスラエルは近年、イランを警戒するアラブ諸国に接近してきた。アラブの大国サウジアラビアとの国交正常化を米国の仲介で模索した。今回の事態で、イスラエルはパレスチナ問題での譲歩は簡単にはできなくなり、サウジもこの状況下では交渉を進めにくくなった。
 また、サウジは中国の仲介でイランとの外交関係の正常化を狙う。しかし、イランのライシ大統領がハマスのイスラエル攻撃を称賛したことで混乱も想定される。イランの核開発をにらみ、米国から有利な条件を引き出したいサウジの思惑もあり、そもそも事態は流動的ではあったが、期待された中東情勢の緊張緩和は見通せなくなった。
 欧米諸国や国連のグテレス事務総長らがハマスを強く非難した。中東では自制の要求がある一方、ハマスへの連帯も伝えられる。思いは複雑に絡み合う。混乱に乗じた他勢力の行動が危惧され警戒が怠れない。
 ロシアのウクライナ侵攻で国際組織からガザへの支援が手薄になり、人道危機が強まったことが今回のハマス奇襲の背景に指摘される。広範で困難は大きいが、和平へ粘り強く取り組むしかない。

高知のニュース 社説

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