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2023.09.13 08:35

牧野博士の「真実」浮き彫りに 最新評伝「シン・マキノ伝」刊行  練馬記念庭園の田中学芸員執筆  本紙ウェブ連載まとめる

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 牧野富太郎博士の最新の本格的評伝「シン・マキノ伝」が刊行された。筆者は東京の練馬区立牧野記念庭園記念館の田中純子学芸員で、博士の人物研究の第一人者。最新の史料を綿密に考証し、その真実の姿を浮き彫りにしている。

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 博士の生涯をたどった本は、晩年に自らが書いた「牧野富太郎自叙伝」(講談社学術文庫ほか)や生前に親交のあった人たちの評伝、小説など多数刊行されている。本著はそうした文献を踏まえつつ、著者が独自に入手した書簡や新たな視点を持って、94年に及ぶ生涯の業績と人物像を詳述した。

 小学校中退の学歴で上京し、東京大学植物学教室への出入りを許される。そこで目覚ましい業績を挙げながらも当時の教授、矢田部良吉に出入りを禁じられた。この有名なエピソードについても、あまり省みられてこなかった矢田部側の事情を最新の史料と知見を基に考察。2人が植物学者として対等なライバル関係にあったことが明らかになってくる。

 博士が編さんした「牧野日本植物図鑑」は、死後も改訂を重ねながら刊行が続く現役の刊行物。この図鑑はいかにして生まれたのか。そこにあった生みの苦しみの実相も明らかにし、図鑑刊行にもまたライバルがあったことなどが書かれている。

 「雑草という草はない」というのは博士の名言として認知されていたが、根拠となる史料は見つかっていなかった。筆者はこれを「牧野に関する最大の問題」として調べ続けていた。最近になってその根拠となるものが作家、山本周五郎に関する著書にあることを発見。そうした経緯も語られている。

 本書は2022年8月から23年6月まで高知新聞ウェブサイトで連載された「シン・マキノ伝」全76回をまとめて刊行された。発行元は牧野日本植物図鑑を刊行する北隆館。1430円。(竹内 一)

名言「雑草という草はない」を探索する「シン・マキノ伝」番外編③ 田中純子(牧野記念庭園学芸員)

高知のニュース 本紹介 牧野富太郎 シン・マキノ伝

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