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2023.06.23 08:30

名言「雑草という草はない」を探索する「シン・マキノ伝」番外編③ 田中純子(牧野記念庭園学芸員)

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企画展「取材記者 清水三十六 ー山本周五郎、最後のサラリーマン生活ー」 画像提供:帝国データバンク史料館

企画展「取材記者 清水三十六 ー山本周五郎、最後のサラリーマン生活ー」 画像提供:帝国データバンク史料館

 牧野富太郎を顕彰する施設の一つ、練馬区立牧野記念庭園(以下、記念庭園)は2010年にリニューアルオープンした。その時から学芸員が置かれ、企画展などを開催する仕事とともに、牧野の人生や事績を改めて調査していこうということになった。牧野については多くの資料が残されているので調べがいがある一方で、見落としてしまう恐れもあってなかなか難しい。その上、調べてもよく分からないことはやはりある。そのような疑問の一つが、「雑草という草はない」という名言を牧野が果たして言ったのか、あるいはそれを書いた牧野の文章がどこかにあるのかということであった。

 これは、牧野に関する最大の問題といっても過言ではないかもしれない。というのは、入江相政編「宮中侍従物語」(1980年)の中に同様な言葉を天皇がおっしゃられたという話が載っているからである。その本によれば、侍従が庭に生い茂った「雑草」を刈りましたと申し上げたところ、天皇は「雑草ということはない」と言われ、さらに「どんな植物でも、みな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方でこれを雑草としてきめつけてしまうのはいけない。注意するように」と話されたということである。昭和23年に牧野が昭和天皇にお会いした時、昭和天皇は牧野と同じ考えを抱いておられて2人で共感されたのではないかということを、「霧生関」(第54号、2018年)に寄稿した記事に書いた覚えがある。記事のタイトルは「『雑草という草はない』と牧野富太郎」。その時点では牧野が言ったのかどうかを確証できず、むしろ読者に情報提供を呼びかけるつもりで記事にしたのであった。今回は、ようやく確証を得るに至った名言探索の長旅を述べたい。

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