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2023.08.31 08:00

【ジャニーズ問題】誠実に向き合い救済を

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 被害者と誠実に向き合い、救済のための措置を講じる必要がある。被害回復がなければ再発防止への取り組みも説得力を欠いてしまう。
 ジャニーズ事務所創業者のジャニー喜多川前社長が多数のジャニーズJr.に長期間にわたり性加害を繰り返していたと、外部専門家の「再発防止特別チーム」が認定した。同族経営の弊害に言及し、喜多川氏のめいである藤島ジュリー景子社長の辞任も提言した。
 報告書は、性加害の根本原因が喜多川氏の性嗜好(しこう)異常にあるとみる。また、デビューやプロデュースなど生殺与奪の権を握る喜多川氏と未成年者とは「一方的な強者・弱者の権力勾配のある関係性」にあったと位置付けた。
 被害者は相談も満足にできず、そうした心理につけ込むような形で被害は潜在化した。また事務所側は積極的には関与せず、「見て見ぬふり」に終始した不作為が被害を拡大させたと指摘した。
 チームのヒアリングに、当時のことを思い出して嫌な思いをする、度重なる幻聴やフラッシュバックで自殺願望も抱くようになったなどの供述があったという。心の傷は深く、痛みは和らいでいない。
 被害者救済に関して報告書は、喜多川氏が死去しているため、性加害の事実認定について被害者側に法律上の厳格な証明を求めるべきではないとも書いている。被害者に寄り添う姿勢を示したと言える。
 チームの林真琴座長は「謝罪と救済なくしては今後再生を図ることは難しい」と述べた。まずは被害者との対話が不可欠だろう。事務所は今後の記者会見で取り組みを説明するという。信頼回復へどう応えるのかに関心が向けられる。
 この問題ではメディアの姿勢も問われている。一部週刊誌を除き、性被害を正面から取り上げてこなかったことが問題視された。
 報告書は、メディアからの批判を受けることがないため、事務所が自浄能力を発揮して再発防止を図ることや被害者を救済することを怠ったと訴える。メディア側は、被害の拡大につながったとする指摘を重く受け止めなければならない。 
 一方、告発した被害者が、交流サイト(SNS)などで誹謗(ひぼう)中傷を受ける事案が発生している。矛先は実態調査を求めるファン有志の団体にも向かっている。
 事務所への風当たりが強まる中、応援するタレントが巻き込まれることへの反発や怒りが背景にあるとされる。新たな加害が生じている認識が乏しいようだ。被害者の救済と再発防止へ向けての行動であり、攻撃的な態度は容認しがたい。
 国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会の専門家が先ごろ調査に訪れ、被害者の救済を求めた。国の関与を求める意見もある。
 もちろん人権問題は一企業の問題にとどまることではない。ハラスメントに対する批判意識が高まっている。人権尊重に関する研修など、取り組みの強化が欠かせない。

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