2024年 04月30日(火)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.08.19 08:30

3.11に学んだ夏 防災の誓い新た(下)―高知新聞社「防災いのぐ特派員」が被災地報告

SHARE

 高知新聞社の防災プロジェクト「いのぐ」の一環で、県内の中学生6人が「防災いのぐ特派員」として8月3~5日に東日本大震災の被災地、宮城県を訪れた。語り部の話を聞き、震災遺構を見て、防災の誓いを新たにした6人の思いを本人が撮った写真とともに紹介する。

高知国際中1年・吉良川柚帆さん(高知市)
前向きな考えも多く
 宮城県訪問前の集中講座で、東日本大震災の被災写真を見たり、起震車で揺れの恐ろしさを体験したりしました。たくさんのことを学び、被災地では現地でしかできない、実際に見て、聞いて、話すことを大切にしようと考えていました。

 震災遺構を何カ所も回り、いろんな人の話を聞くと、やっぱり自分とは違う考えがあり、知らなかったこと、分からなかったことも知れました。中でも名取市閖上(ゆりあげ)地区の語り部、丹野祐子さんの「2011年3月11日をなかったことにしたくない」という考えに驚きました。

 悲しい、苦しいという、多くのマイナスな気持ちが集まっている日なので、私なら忘れてしまいたい。でも、昔のこの町が今も好きだから、という理由を聞いて、新しい考えを見つけることができました。

 今回の被災地訪問を通し、たくさんの考えやそれぞれの思いがあることを学びました。失ったものは簡単に元通りになるわけがありません。元通りにならないものもたくさんあります。しかし、あの日に起こった悲劇を次の世代に受け継ごうとする、前向きな考えを持っている人も多くいることが分かりました。

 これから私は、40年以内に来ると言われている南海トラフ地震で、被害をできるだけ少なくするために防災に積極的に取り組んでいきたい。まずは自分の家でできる限りのことをし、その次は学校や自分の住んでいる地域でも、防災について広めていきます。

▽特派員EYE
 コンクリート製の渡り廊下が津波で倒れていました。こんなに重いものが倒れたことに驚きました(石巻市の震災遺構大川小学校)


芸西中3年・筒井栄大郎さん(芸西村)
生き残る大切さ学ぶ
 今まで僕は、自分なりに基本的な震災対策はやっていたけど、実際に地震が起きた直後にすることはあまり考えていませんでした。そのことに被災地訪問前の集中講座で気付きました。東日本大震災で被災された方、現地に駆け付けて被災者の治療に当たった方、取材をした方などから、被災地の様子を聞けたのも貴重な体験になりました。

 宮城県では石巻市、気仙沼市、南三陸町、名取市、仙台市を回りました。津波や火災で被災したままの姿で残る震災遺構を見学すると、あの日に起きたことの悲惨さがよく分かりました。鉄骨が折れ曲がっていたり、窓ガラスがなかったり、普段生活しているとあり得ないような光景が広がっていました。津波は小さくても危険だということも改めて認識しました。

 あの日いったい何があったのか、自分はその時どうしていたのかなど、各地の語り部がいろいろなことを詳しく話してくれました。語り部の皆さんに共通している思いは「地震が起きたらまず生きる行動をして」ということでした。

 僕は今まで、「地震が起きたらどうしよう」「家族の安否を確認するべきやろうか」などと、いろいろなことを考えていましたが、この言葉を聞いて本当にその通りだなと思いました。被災した後に何が必要かよりも、まず生きることが必要なのです。

 被災地訪問で僕は、生き残ることの大切さと、生き残った人は何をするべきかを学びました。

▽特派員EYE
 自分の通っている学校も津波の被害を受けたらこうなってしまうのかな、と思いながら撮りました(気仙沼市の東日本大震災遺構・伝承館=気仙沼向陽高校旧校舎)


付属中2年・藤田結月さん(高知市)
身近なことと捉えて
 私が今回の経験で、まず一番に思ったのは「震災は世界中全ての人に関係している」ということです。

 そう思うきっかけになったのは、集中講座で聞いた日赤の方のお話でした。けがの手当ての仕方だけでなく、東日本大震災発生時の日赤の動きも話してくれました。その中で日本中のたくさんの地域から病院や日赤の人が集まったことを知りました。東日本大震災を東北だけのことではなく、自分にも関係していることと捉えないといけないと感じました。

 自分にも関係していると捉える人が多いからこそ、たくさんの医療支援者がすぐに駆け付けたのではないか。そう考えると、もっと震災を身近に感じることが大切だと思いました。

 また、世界中の人に関係していると思ったのは、石巻市の語り部、阿部任さんのお話です。阿部さんは被災から9日後に祖母と一緒に救出されました。当時メディアでもたくさんの報道があり、9日間どう過ごしていたか、どうやって救出されたかなどを詳しく話してくれました。

 病院に運ばれてから数日後、日本に限らず海外からも心配や生き延びたことを祝福してくれる手紙がたくさん届いたそうです。海外からという事実に私は驚きました。それほど海外の方は日本のことを気にかけてくれていたのか、と。「震災は世界中全ての人に関係している」。自分がその関係する1人であることを、皆さんにも忘れずにいてほしいです。

▽特派員EYE
 日和山の鳥居です。日和山からは復興した閖上の町が見え、青空に映えてとてもきれいでした(名取市)



高知新聞防災プロジェクト「いのぐ」
 4年ぶりに被災地訪問を再開した今年の「防災いのぐ特派員」事業では、宮城県での研修前に計3日間の集中講座を実施した。

 被災者のオンライン講演は保護者と一緒に聴講。自宅の場所や家族構成から発災時の状況を想定し、避難方法などを考えるプログラムにも挑戦した。応急手当て講習を受けたり、段ボールベッドを作ったりもした。

 特派員6人は事前に被災者の思いに触れ、日頃の備えを確認して被災地へ。現地で聞いた語り部の話や震災遺構の様子などは、15日付本紙の「高知地震新聞」で紹介している。

高知のニュース 防災・災害 いのぐ 教育

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月