2024年 05月03日(金)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2023.08.18 08:00

【日中条約45年】関係安定へ対話重ねたい

SHARE

 日本と中国が平和友好条約に調印して今月で45周年を迎えた。日中外交は近年、厳しい局面が続く。一つの節目に「善隣友好」の理想を掲げた条約の原点を見つめ直したい。
 条約は1978年8月、北京で調印され、72年の国交正常化に続いて日中関係を前進させた。恒久的な平和友好関係の発展、覇権主義への反対、善隣友好の精神に基づく経済・文化関係の一層の発展と、両国民の交流促進などをうたう。
 このうち当時、対立していたソ連を念頭に「反覇権」の文言に固執したのは中国の側だった。
 ところが45年がたち、国際情勢や中国の姿勢は大きく変貌した。2010年には国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界2位の経済大国に急成長。国防予算も1992年から30年間で約39倍に増やしている。
 沖縄県・尖閣諸島周辺では海警局の船舶による領海侵入が常態化。南シナ海では軍事拠点構築を進める。台湾への軍事的挑発も続け、侵攻を懸念する声も高まっている。台湾周辺での昨年の軍事演習では、日本の排他的経済水域(EEZ)にミサイル5発を落下させた。
 72年の日中国交正常化に尽力し、条約締結を前に死去した周恩来(しゅうおんらい)元首相は、自国の大国化を予期。「中国は覇権への道を歩み始めるかもしれない。そうなったら反対すべきだ」と述べている。現在の習近平指導部はこれをどう聞くのだろう。
 一方、日本政府も昨年末、安全保障関連3文書を改定。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費の大幅増を決めた。中国の動向は、国際秩序への「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と表現している。
 今月上旬には自民党の麻生太郎副総裁が訪台。台湾海峡の平和と安定には強い抑止力が必要で、日米や台湾に「戦う覚悟」が求められていると主張し、波紋を広げた。
 覇権主義的な動きを強める中国の動きが前提にあるとはいえ、対立をエスカレートさせかねない発言である。東アジアの緊張が高まり続ける悪循環に陥ることを危惧する。
 日中間にはほかにも、直面する東京電力福島第1原発の処理水海洋放出をはじめ課題が山積する。
 ただ、中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、経済面では切り離せないほど緊密な関係にある。
 新型コロナウイルス禍ではともに経済に打撃を受けた。中国による日本への団体旅行解禁は、往来の活発化で低迷が続く国内経済の活性化につなげる狙いとされる。民間レベルでは「両国民の交流」と相互理解が促される状況にはあるだろう。
 両国は9月の国際会議に合わせ、岸田文雄首相と李強(りきょう)首相の会談を検討している。米中の覇権争いが続く中、中国側には日本との意思疎通を継続する思惑がある。難局の打開へ率直に意見を交換する機会としなければなるまい。
 日中の「善隣友好」は45年前も今も、アジア地域全体の安定化に関わる理想でもあろう。粘り強い対話で糸口を探り続ける必要がある。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月