2023.08.09 08:31
「資料より現場取材大事」 本紙でジョン万連載「白鯨」執筆、夢枕獏さん講演 土佐清水市
執筆にかける思いやジョン万次郎の魅力を語る夢枕獏さん(土佐清水市寿町の市民文化会館)
夢枕さんは「陰陽師(おんみょうじ)」や「餓狼(がろう)伝」などの作品で知られ、万次郎を語り手として描いた長編「白鯨 MOBY―DICK」は2019年3月から20年7月まで本紙で連載された。21年には同作品の直筆原稿を土佐清水市に寄贈。同年、市内で講演を予定していたが、悪性リンパ腫治療のため中止に。今回は闘病を経て念願の登壇となった。
3日の講演では、万次郎が釣り上手だったことや、14歳で遭難した後に捕鯨船に乗り、英語を覚えて活躍した姿などを紹介。「優れた能力とオープンマインドがある人」と魅力を分析した。
また、執筆のために土佐清水を訪れ、住民らに取材を重ねた夢枕さんは「キャラ作りで一番大事なのは、文字資料より現場に行くこと」と強調。万次郎の生家や周辺の景色を見て歩き、主人公と同じ空気を吸って生活を想像したといい、現場での体験や取材が執筆に生かされたエピソードを紹介した。
講演は同市の夏季大学講座として行われ、約220人が聴講した。(小笠原舞香)