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2023.07.27 00:04

【K+】vol.199(2023年7月27日発行)

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K+ vol.199 
2023年7月27日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter201 中西なちお
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.201 有田直子
・なにげない高知の日常 高知百景
・特集 森にいだかれて
 ◎自家製スモーク工房・CaCooo ◎山小屋パン 小屋
・フランス生まれの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉45
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.73|山椒@越知町
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第四十六回
・+BOOK REVIEW
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真

→紙面ビューアで見る

特集
森にいだかれて
◎自家製スモーク工房・CaCooo
◎山小屋パン 小屋

自然好きの店主と、
山の中の暮らしが生み出す
それぞれの“おいしさ”

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真

左/国産チーズを10時間以上いぶして作るスモークチーズは、サクラとウイスキーオークの木のチップをブレンド 右/全粒粉と自家製酵母を使って作るカンパーニュ。プレーンと具入り約10種類の中から5種類ほどを並べて

左/国産チーズを10時間以上いぶして作るスモークチーズは、サクラとウイスキーオークの木のチップをブレンド 右/全粒粉と自家製酵母を使って作るカンパーニュ。プレーンと具入り約10種類の中から5種類ほどを並べて



森に囲まれて暮らしながら 

 見渡す限り山に囲まれた町、津野町。夏の晴れた日に訪れると、力強く茂る森の青葉がパワーを放ち、山を縫うように流れる四万十川や新荘川の清流に癒やされます。石鎚山系の山々が近く、絶景の四国カルスト、高原植物やブナの原生林が自生する森があり、アウトドア派にはたまらない場所。
 そんな山深い町に移り住み、店を始めた店主たちがいます。1人は、千葉県出身の嶋祐也さん。名古屋での会社員時代にキャンプにはまり、その時作った燻製(くんせい)のおいしさを伝えたいと「自家製スモーク工房・CaCooo(カコ)」を立ち上げました。
 もう1人は、中土佐町出身で結婚を機に津野町にやって来た古谷悠子さん。昔から外で遊ぶのが好きで、夫と登山を趣味にしていたことも。5年前、身近にパン屋がないからと、三角屋根の自宅の一角に「山小屋パン 小屋」をオープンしました。
 かつては街で生活し、休みの日に山に出かけていたという2人は言います。「今は暮らしそのものがアウトドアのよう。ゆったりとした時間の中で楽しく仕事をしています」。好きな自然の中で住み、好きななりわいを営んで。森の暮らしの中で、店主たちは生き生きと輝いていました。








濃厚に香る燻製

 焚(た)き火をしながら森で過ごす時間。不便な環境の中で、考えながら居場所を快適にしていくこと。その面白さからキャンプ好きになったという嶋さんは、やがて山奥への移住を考え始めます。「なんでもそろっている都会ではなく、山の中で、暮らしや仕事を自分でつくってみたいと思いました」。たまたま見た四国カルストの写真に感動した嶋さんは、無縁の地の津野町に妻と共に引っ越します。アウトドアに関する仕事をしようと、燻製に可能性を感じ、地域おこし協力隊として働きながら燻製を作り、2年前に独立しました。
 そのこだわりは、「香りの濃厚さ」。キャンプで手作りする燻製は香りが強く好みだったため、その味を追求。試行錯誤し、求める「ガツンとくる香り」にたどり着きます。


アウトドアの楽しさを伝える

 燻製には、サクラの木のチップを使うのが一般的だそうですが、嶋さんは独自の味を求めて一工夫。初の商品のスモークナッツは、リンゴの木のチップでナッツをいぶし、ビールに合う味に仕上げました。今は商品の種類も増え、その味のファンは全国に広がっています。また、昨年、念願の工房兼店舗を四国カルストの麓にオープンし、地元の人にも旅人にも燻製の味を届けています。
 「山に囲まれ、周りにキャンプや川遊びなどで遊べる場所が多くある今の暮らしは理想です。趣味の延長の燻製作りが仕事になって、遊びと仕事が一体化したようで、毎日が充実しています」と嶋さん。アウトドアサウナと燻製めしの体験プランも準備中とのこと。燻製の味とアウトドアの面白さを多くの人に伝えたいと、夢は広がり続けます。


ナッツは、温度を一気に高め高温短時間でいぶすことで強い香りが。1台で約2袋しか作れないため、製造日は一日中作業する

ナッツは、温度を一気に高め高温短時間でいぶすことで強い香りが。1台で約2袋しか作れないため、製造日は一日中作業する






ほれ込んだ四国カルストの近くに造った工房兼店舗。スモーククリームチーズを使ったキッシュはここだけで買える味

ほれ込んだ四国カルストの近くに造った工房兼店舗。スモーククリームチーズを使ったキッシュはここだけで買える味




プロフィール
嶋祐也さん
山で暮らしたいと2019(令和元)年に津野町に移住。自家製スモーク工房・CaCoooを立ち上げ、燻製商品を販売。昨年、工房兼店舗をオープン。千葉県出身。33歳



◎自家製スモーク工房・CaCooo
津野町芳生野乙644-1
営/土・日 10:00〜15:00
休/月〜金(臨時休業あり)
HP/https://cacooo.official.ec
最新情報や問い合わせは、
Instagram/@cacooo_smoke

<取扱店>
店舗、自社ホームページ、風車の駅(津野町)、
高知 蔦屋書店(高知市)など



●読者プレゼント
スモークチーズ・スモークナッツを各1袋2人にプレゼント。ご応募はプレゼント応募フォームよりどうぞ。



パンのある暮らしを共有

 高知市で暮らしていた時、通っていたパン教室の先生に影響され、パン好きになったという古谷さん。「パンとスープの合わせ方や、タルティーヌなどの作り方を教わって、こんな食べ方があるんだとパンのイメージが変わりました」。津野町に来て知ったのは、朝食にパンを食べる人が多いこと。地元の人にも自分が体験したパンのある暮らしを共有したいと、いつかパン屋をやりたいという願いを形にします。
 開店の日、店頭に並ぶ約30種類のパン。その9割が自家製酵母で作られています。看板メニューは、カンパーニュ。古谷さんがパン教室で出合って感動した味です。「食パンともフランスパンとも違う食事パンです。かむほどに味わいが増しますし、ピザにしてもしゃれて見えるのが気に入っています」


幅広い種類のパンを並べて

 老若男女が店を訪れるため、幅広い種類のパンを用意するのが古谷さん流。食パンやあんパンなどの定番に加え、あんこにホワイトチョコレートを混ぜた釜いり茶のパンや、Cacoooのスモークチーズに塩こしょうを利かせたパンなど、地元産の食材を使うことや、一風変わった味付けのパンも好んで作っています。
 「山の暮らしは時間の流れがゆっくりで、気持ちにゆとりができました。好きな仕事ができ、今はパン作りに夢中です」。出産のため一時休業していましたが、4月から復帰。「これからはもっと店を開けて、パンの可能性をシェアしたい」と意欲的です。
 店にはいつも地元のお客さんと楽しそうに話す古谷さんの姿が。山のパン屋さんは、地元の人にも町外の人にも愛されて。パンのあるすてきな暮らしを食卓に届けています。







開店の前日は仕込みの日。当日は午前4時からパンを焼き、子どもの世話をした後、開店までの間は総菜パンを準備

開店の前日は仕込みの日。当日は午前4時からパンを焼き、子どもの世話をした後、開店までの間は総菜パンを準備


育休中に新商品を考え、仲間入りしたパウンドケーキやマフィンなどの焼き菓子

育休中に新商品を考え、仲間入りしたパウンドケーキやマフィンなどの焼き菓子




プロフィール
古谷悠子さん
高知市で働いていた頃にパン教室に通い、パン好きに。結婚を機に津野町に移り住み、2018(平成30)年に「山小屋パン 小屋」を開店。中土佐町出身。41歳




◎山小屋パン 小屋
津野町杉ノ川甲13-1
問/090-7781-9954
営/2週間ごとの金 11:00〜18:00
イベント出店などの最新情報は、
Instagram/@koya_bread

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