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2023.07.08 08:00

【安倍氏銃撃1年】積み残る課題と向き合え

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 安倍晋三元首相が奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡した事件からきょうで1年になる。
 白昼の凶行の衝撃は大きかった。言論や政治を暴力で封じることは許されない。民主主義の根幹を揺るがせないために、動機や背景を明らかにして、浮かび上がる課題に真剣に対処する必要がある。
 殺人罪などで起訴された山上徹也被告の供述などから、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が注目された。母親の多額献金で生活が困窮して教団に恨みがあり、教団と接点がある安倍氏を狙ったとされる。
 事件の直接の動機を被告の政治的思想と関連づける見方が後退する一方で、社会的に問題が指摘される教団と政治側との関係が相次いで表面化した。自民党は所属議員180人に教団との接点があったと公表した。会合出席や組織的な選挙支援を受けた事例があった。野党議員にも接点が判明している。
 教団とどのような関係にあるのか実態の把握が欠かせない。政策決定への関与の有無を探ることも重要だ。岸田文雄首相は議員自らが説明責任を尽くすように求めた。だが解明を主導する意欲はうかがえない。
 また、細田博之衆院議長も教団との関係は認めたものの、非公開の場での説明にとどまり、記者会見などには応じていない。責任を果たすべきだ。
 昨年9月には首相経験者として戦後2例目の国葬が執り行われた。最大派閥に配慮した政権運営で挙党態勢を築きたい思惑が指摘された。決定の経緯や法的根拠が不明確で、その是非を巡り世論は二分された。
 実施基準や手続き、国会の関与の在り方など論点は多くある。しかし、検証は不十分なまま立ち消えとなるらしい。ここでも説明と向き合う首相の姿勢は定まらない。
 事件を受けて、人権侵害や困窮が指摘される「宗教2世」問題への関心が高まった。不当寄付勧誘防止法が成立、施行されたが、実効性は不十分との見方がある。被害防止と救済への対応を高める取り組みが引き続き求められる。
 文化庁は、宗教法人法に基づく質問権の行使に踏み切った。調査を始めてから半年以上が経過したが、解散命令請求の可否の判断には至っていない。信教の自由は尊重されなければならず、抑制的な対応を求める法の趣旨を踏まえても慎重に臨むのは当然だ。とはいえ、ないがしろにはできない問題だ。毅然(きぜん)とした対応が求められる。
 要人警護は見直しが迫られ、警護要則が改定された。しかし、4月には首相の演説会場に爆発物が投げ込まれる事件が起きている。厳格さを求めたい警備側と、触れ合いを意識する政治家側との温度差が常に取り上げられる。政治テロの排除へ向け、検討を重ねる必要がある。
 首相はことあるごとに「丁寧な説明」を繰り返すが、実践されたとは言い難い。国民の疑問を曖昧にしたままでは、政治への不信感は拭えはしない。

高知のニュース 社説

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