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2023.06.19 08:00

【物流の24年問題】社会全体で準備加速を

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 来春からトラック運転手の残業規制が強化されるのに伴い、労働力が不足して物流が滞る、いわゆる「2024年問題」の懸念が強まっている。地域経済や日常生活にも密接に関わる問題であり、導入まで10カ月を切った中、社会全体で準備を加速する必要がある。
 働き方改革を推進する19年成立の改正労働基準法に基づいた対応で、トラック運転手の残業上限を年960時間とする。長時間労働が問題視されているトラック運転手の労働環境を改善するのは当然の流れだ。
 だが、影響は小さくない。業界は近年、インターネット通販の拡大で荷物が増える一方、低賃金や高齢化もあって運転手不足が慢性化しており、その上に残業規制が重なれば、輸送力不足はより深刻になる。
 民間シンクタンクによると、このまま何の手だても講じなければ、25年には全国の荷物量の28%、30年には35%が運べなくなると試算。高知県など条件不利な地方ほど輸送力が不足し、物流が滞るとした。
 そうなると荷主は現在のような発注ができなくなり、消費者が享受できるサービスも低下する恐れがある。とりわけ、生鮮食品や医薬品などの運搬が滞る事態になれば、地域の日常に大きな影響が生じる。
 トラック運転手の健全な労働環境の確保を前提にした上で、影響が最小限に抑えられるよう、物流業界、荷主、消費者、行政が危機感を共有するべきだ。
 荷主と業界には、業務の効率化が喫緊の課題となる。複数の荷主が同じ場所に荷物を運ぶ場合は1台にまとめたり、一度に多数の荷物を運べる船や鉄道に輸送を切り替えたりするなどの対応が挙げられ、既に取り組んでいる事例も見受けられる。
 商慣行の見直しも急務だろう。運転手が長時間の荷物待ちを余儀なくされたり、荷物の積み降ろしなど付帯業務も任されたりする実態があり、長時間労働や離職の一因になっている。
 こうした慣行は、運送事業者の大半が中小企業であり、荷主より立場が弱いことと無縁ではあるまい。それは運転手の賃金水準の抑制にもつながっていると言える。発注費も含めて契約条件、業務内容の適正化が求められる。
 消費者の意識転換も必要だ。受取人が不在の場合の再配達が運送業者の大きな負担になっている。まとめ買いによる配達回数の削減や宅配ボックスの利用など、消費者が業務軽減に貢献できる余地も小さくない。増加する物流コストの価格転嫁に応じることも、場合によっては必要かもしれない。
 政府は先ごろ、24年問題に対する政策パッケージをまとめた。再配達率を半減させるための消費者向けポイント付与事業や、荷主優位の不当な商慣行の是正に向けた行政介入、高速道路のトラック速度規制の上限引き上げなどを盛り込んだ。
 規制適用まで残された時間は多いとは言えない。官民挙げて速やかに取り組みを具体化していきたい。

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