2023.06.18 05:00
小社会 お疲れさま
広島には1976年、宮崎県内の高校からドラフト1位で入団。その際スカウトから「親の死に目には会えないから覚悟しとくように言われて震えた」という。ブログにある。勝負の世界に生きる覚悟を決めた瞬間だったのだろう。
そのブログは6年前、父親が他界した時のもので、少年時代の父との思い出もつづられている。記されているのはいかにも昭和の父親の姿だが、存在は大きかったらしい。
農業一筋で倹約に徹し、派手なことが嫌い。息子を褒めることはなかったものの、野球で活躍すると喜んだ。「親父(おやじ)の嬉(うれ)しそうな顔が見たくて少年時代は野球を頑張った気がします」
名投手となった北別府さんも3人の子の親となった。父親としても愛されていたのがやはり、ブログから伝わってくる。亡くなる数日前に妻の広美さんが夫のブログを更新し、「もうすぐ父の日だよ、がんばれ」と記した。闘病中の父のために、子どもたちが贈ったリクライニングチェアの写真付きで。
きょうがその「父の日」。残念ながら北別府さんは逝ったが、家族から褒めてもらえたに違いない。投手としても親としても、「よく頑張った」「お疲れさま」と。あの世ではきっと父親からも。