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2023.05.24 08:00

【株価3万円台】景気実感と隔たり大きく

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 株価の上昇が新型コロナウイルス禍からの景気回復を裏付けていればいいが、その実感は乏しい。先行きは予断を許さないだけに、堅実な取り組みを進めたい。
 東京株式市場の日経平均株価(225種)は一時3万1千円を超えた。きのうは高値警戒感から9営業日ぶりに反落したが、取引時間中として約33年ぶりの高値を付けバブル経済崩壊後の最高値を更新した。
 企業の好業績のほか、業績に比べて株価水準に割安感があることが好感されている。自社株買いや増配など株主への利益還元の強化が打ち出されることも買い注文につながっているようだ。
 相場の押し上げには海外機関投資家の買いが影響していると、市場関係者は指摘する。米欧が高インフレを抑えるために急速な利上げを行ってきたため、景気が鈍化していることが背景にあるとみられる。
 日本の1~3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は3四半期ぶりのプラス成長となった。海外経済の減速により輸出が落ち込んだが、コロナ禍が和らぎ、外食や旅行など個人消費がけん引した。急激な円安や資源価格の高騰がやや落ち着いたことも寄与した。
 新型コロナの感染症法上の位置付け移行に伴い、訪日客の増加など経済活動は一段と活発化するとみられる。ただ、遅れていたコロナ禍からの回復の本格化が期待されるとはいえ、物価高がのしかかると個人の消費意欲は頭打ちしかねず、先行き不透明感が漂う。
 景気実感に近いとされる名目GDPの伸びは物価高が大きく影響した。物価の上昇に賃上げは追いつかず、実質賃金は前年実績を下回る状況が続いている。
 今後も食品や日用品の値上げや、電気料金の引き上げが予定される。家計の節約志向が強まるようなら景気を減速させかねない。
 日銀は新体制となったが、大規模な金融緩和の修正にはまだ動いていない。金利上昇の影響は幅広いだけに、丁寧な対応が求められるのは当然だ。物価と賃金がそろって上昇する好循環の実現は簡単ではない。
 輸出の動向は気がかりだ。景気の先行指標とされる半導体の需要は世界市場の規模が落ち込むとみられる。きのうは半導体を巡る米中対立への懸念から関連銘柄が売られ、相場全体を押し下げた。 
 米国の景気の不安定さも気になる。米連邦準備制度理事会(FRB)は物価上昇の抑制を優先した利上げを継続し、「副作用」で中堅銀行の破綻が相次いだ。利上げ打ち止めが示唆されて金融不安収束への期待感がある一方、利上げ継続の観測は根強く、警戒感を拭えない。
 米政府の債務上限問題を巡る協議の行方も関心が集まる。バイデン政権と野党共和党が折り合えなければ、月内に政府資金が枯渇して米国債が初のデフォルト(債務不履行)に陥り、市場が混乱する恐れがある。下押し要因は多い。「日本買い」に浮かれてはいられない。

高知のニュース 社説

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