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2023.05.14 08:29

勉強代は「2万箱」―村を作りかえたごっくん男 馬路村農協前組合長 東谷望史物語(30)

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◆「村を作りかえたごっくん男」1回目からのまとめ読みはこちらから

催事に出店、ギフトセットを売る東谷さん

催事に出店、ギフトセットを売る東谷さん

 1985(昭和60)年、6倍希釈の濃縮ユズジュース「ゆずの園」ができたことで、馬路村農協はギフト商戦への復帰を果たした。

 「復帰」という表現には注釈がいる。その5年ほど前、ギフト商戦に挑戦して手ひどくはね返されていたのである。

 営農指導員兼営農販売課員になって間もないころだった。ユズ酢の販売に頭を悩ました東谷さんは、食品ギフトに目を付けた。

 「高知のもので県外に送れる食べ物って何があるぜって考えたがよ。お菓子類はあった。(菓子メーカーの)浜幸があったり、青柳があったり。果物は新高ナシや山北ミカン、文旦があったけんど、その季節だけながよ。ほんで、県内の人が県外へ何か送ろうとする場合に食品ギフトがいるがやないかと。それはやらないかんと思うて…」

 しかし商品はユズ酢しかない。

 「作ったのがユズ酢だけのギフト商品。もちろん搾った時期が一番フレッシュ感があるけんどねえ、300ミリリットルの瓶を2本入れたギフトセットを作った」

 これが見事にこける。

 「全く売れんがよ。組合長がそのとき、安芸市の印刷屋に頼んで2万枚も作っちゅうがよ。安芸の印刷屋も自分のところでは作れんので高松の印刷屋で作っちゅうと思うがよ。数がまとまったら単価が下がるきよねえ、とにかく2万枚」

 2万枚というのはギフト用のパッケージになる厚紙のこと。上箱と下箱、仕切りがセットになって2万箱分。

 「1個なんぼかかったか忘れたけんど、数作ったら安うなるゆうのはそら分かるけんど、2万箱らあ、最初からよう売るわけないやいか。ほんで結局ねえ、ギフトって難しいというのでストップするがよ。2万箱分、全部捨てた」

 以来、ギフトには手を付けなかった。が、県外の物産展に行くとギフトが目につく。

 「夏のお中元ごろにけっこう物産展があるがよ。県外の百貨店に行ったら、ワンフロア使うてギフトコーナーがオープンするし、食品売り場でも一人が何十個も買いゆう。それを見てよねえ、やっぱりギフトっているなあと思うてよねえ」

 「ゆずの園」の完成はそんなときだった。

 「それでまたギフトづくりの第2弾が始まるがよ。けんど、商品アイテムはそれほどない。馬路村ゆうブランドが通用するわけでもない。で、頼ったのが龍馬」

 新たなギフトセットにつけた名前が「竜馬の国から」である。神頼みならぬ龍馬頼み。ギフト商戦への復帰を坂本龍馬の知名度に託した。

 「龍馬と馬路は関係ないけんど、『竜馬の国』やったらOKかな、と思うてよねえ。『竜馬の国から』の商標も取って。龍馬ブームのあとやったらたぶんこんな商標取れんかったろうけどねえ」

 早速、県外の物産展に持って行った。

 「中身には『ゆずの園』を入れたり、ユズ酢を入れたり。これがギフトの売れ始めやったねえ。やっぱりユズ酢だけを詰めよった時代とは違うた。単に龍馬で売れたわけではないと思う」(フリー記者・依光隆明)

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