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2023.04.23 08:00

小社会 民族と遺伝子

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 人とは何か。どこから来て、どこへ向かうのか。哲学としては当欄の手に余るテーマも、科学では人類が世界に広がる道程の研究が急速に進む。

 新型コロナウイルス禍で有名になったPCR法で、わずかに残った古代人の遺伝子を解析できるようになったことが大きいという。国立科学博物館の篠田謙一館長は著書「人類の起源」で、いまの世界は「これまでのヒトの移動の総和」と説明している。

 膨大な遺伝子データからは、長い時間軸のなかで異なる特性を持った集団が時に融合し、時に置き換わる様子が浮かび上がる。「民族」の一言でくくられた集団も、遺伝子的には「全く性質が違う」人々の集まりの場合が珍しくはない。

 日本人も先に住んでいた縄文人と、渡来した弥生人の遺伝的特徴に濃淡があり、南太平洋の島に住む人々には台湾由来の遺伝子が伝わる。そう考えると国や民族といった概念にどれほどの意味があるのだろう。

 ロシアが隣国に侵攻して、あすで1年2カ月。ウクライナ東部などで戦闘が続き、双方の兵士や民間の犠牲も増え続ける。長期化に伴い国際社会の分断も鮮明になり、和平の兆しも見えない。

 侵攻以降、複数の国にまたがるスラブ民族を一体と捉えるプーチン大統領の歴史観が注目されてきた。いまも民族主義的な概念にとらわれていよう。世界で絶えない戦火。科学から周回遅れの哲学を持った為政者がいかに多いことか。

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