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2023.04.15 08:40

高知・追手前高5年連続定員割れ 少子化、一発試験、ガリ勉イメージ影響 「県全体の学力低下危惧」―変わる学校

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追手前高校の正門。シンボルの時計台がそびえる(高知市追手筋2丁目)

追手前高校の正門。シンボルの時計台がそびえる(高知市追手筋2丁目)

 高知県内公立で進学実績トップを誇る追手前高校(高知市追手筋2丁目)が5年連続で定員割れとなった。今春の入学者は280人の募集に対し234人。一方で、生徒数確保を優先するために合格点が下がっているとの指摘もあり、関係者から「県全体の学力低下につながりかねない」と危惧する声が上がっている。

 県教委は2015年度入試から制度を変更。全定員を1回の試験(A日程)で募集する「一発試験」になった。定員を満たさなかった学校がB日程で追加募集する。

■9年で定員超2度

 変更以降の9年間で追手前が定員を満たしたのは、わずか2度だけ。15年以前にも定員割れの年はあったが、5年連続は少なくとも00年以降では初。合格者数は近年、30~50人程度不足している。

 志望者が減った背景には、少子化はもちろん、「一発試験」の影響がある。不合格となった場合に他の志望校の残り枠がほとんどないため、難関の追手前に挑戦する受験生が減ったと考えられる。

 さらに、高知市内の中学校長や進学塾経営者らが指摘するのが追手前の〝ガリ勉イメージ〟だ。

 「勉強、勉強で宿題が多く学校生活が面白くない」「勉強ばかりで自由がない」との印象を持っている中学生が多く、「覚悟がある子しか行かない」。

 この点について、追手前の前校長は「公立の進学トップを維持してきたせいで『勉強ばっかり』というイメージが付いたのかもしれない」と語る。

 体育祭や文化祭にも力を入れてきたが、近年の新型コロナ禍で外部の参加は保護者のみ。前校長は「以前は行事を見て憧れ、入学を希望する中学生もいたが、PRする機会を失ったことも痛かった」と5年連続定員割れの背景を説く。

■「合格点下がった」

 定員割れが続くうちに、「追手前の入試の合格点がびっくりするほど下がった」との指摘も聞かれるようになった。

 高知市内のある中学校長によると、競争率が1倍を超えていた頃の合格ラインは250点満点で180点以上だったが、近年は120点台の子が合格したと明かす。同市内の進学塾も「ダメ元で受けた子が全員受かった」。喜びつつも、驚きを隠さない。

 こうしたことから、「追手前が勉強しなくても入れる学校になれば、県全体の学力が〝地盤沈下〟しかねない」「下位合格者に合わせて授業をすることになればマイナスになる」という懸念や、「いっそ定員を絞って少数精鋭にしてもいいのではないか」との声も出ている。

 追手前関係者は、入学生の学力差の拡大を認めつつ、授業の理解度に応じて違う課題プリントを配布するなどして全体の学力を引き上げているとし、「成果は出ている」と強調する。実際、今春卒業組の国公立大進学率は65%。他の進学上位校を20ポイント以上引き離し、中には東大の合格を勝ち取った生徒もいた。

■在校生「楽しい」

 在校生はどう感じているのか。「確かに小テストや宿題が多い」「先生に勉強、勉強と言わないでって思うときはある」。定員割れは、生徒の間でも話題になったそうで「人気がないのは残念」という。

 それでも「学校生活は楽しい」と口をそろえる。2年生の女子生徒は「みんな意識が高くて勉強も頑張っているので刺激を受ける」。授業開始前や放課後に自習したり、教員に質問に行ったりする生徒も多いそうで、「不安だった数学を先生に聞きに行ったら、分かるまで丁寧に教えてくれた」と喜ぶ。

 別の女子生徒も「体育祭、文化祭が楽しみで入学した。先生も『オンとオフをしっかり分けて、楽しみなさい』と。お祭り騒ぎができて楽しかった」。

 4月に着任した谷村孝二校長は「本校は知的好奇心をくすぐり、『勉強が面白い』と思える教育を行っていると自負している。本物の力が付くと確信している」。チャレンジを呼び掛けている。(加治屋隆文)

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