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2023.04.04 08:00

小社会 コロナ禍の新入社員

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 スーツは不思議だ。着慣れていないと、着られてしまう。そんな「スーツに着られた」若者たちをきのうは高知の街でもよく見かけた。初出社のフレッシュマンの姿に、昔の自分を思い出した。

 学生から社会人へ。それは初めての本格的な自分探しの機会になる。青春期の自分探しは、たいてい切ない。そのありようをリアルに描くのが、朝井リョウさんの直木賞作品「何者」だ。作中、就職活動中の若者たちが、苦しみ、妬(ねた)み、背伸びし、「何者かになりたい」と自意識と現実の間で揺れ動く。

 今春の新入社員の就職活動は、より悩ましかったに違いない。なにせ貴重な3年間が、あの感染症と重なった。

 活動を制限され、学生時代に力を入れた「ガクチカ」体験にも苦労したとか。人付き合いはもっぱら、オンライン。自分が「何者」か模索したことだろう。

 小説では主人公は最後に「何者」の幻想から抜け出したが、現実はどうか。リクルート業界の専門家は、今春の新卒の経験不足やコミュニケーション力不足を心配する。一方で、培った我慢強さは伸びしろになるとも。デジタルの中で育った「Z世代」。うまく自分の道を「検索」してもらいたい。

 私たちの会社にも新しい仲間が入ってきた。一人一人の清新なあいさつを聞き、はっとする。今年の新人は…とレッテルを貼るのは年長者の悪い癖だ。値踏みされるのはこちらかも。よい同僚になれますように。

高知のニュース 小社会

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