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2023.02.09 08:00

【一般教書演説】厳しい分断修復への道筋

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 2年間の実績を誇示し、民主主義の危機を克服したと主張しても、分断の修復にはほど遠い。2024年大統領選への再選出馬をにらみ超党派の協力を呼びかけたが、実現には困難が立ちはだかる。
 バイデン米大統領は一般教書演説に臨んだ。2年前の議会襲撃事件は衝撃的で民主主義は傷ついたが「今も不屈だ」と訴えた。国民融和へ向けた指導力や専制主義国への対抗を強調したいのだろう。
 社会経済活動を止め、多くのものを奪った新型コロナウイルス感染症が生活を支配することはもはやないと訴えた。これまでのどの大統領が4年間に創出した雇用よりも多くの仕事をつくり出したとも力説している。だが、国民の評価は低迷する支持率が物語る。
 下院で主導権を握った共和党は対決姿勢を強めている。中国に対して「弱腰」とする政権への攻撃は、米国上空に侵入した中国の偵察気球への対応にも向けられる。
 バイデン氏は、中国が主権を脅かせば行動すると力説した。対中強硬姿勢を緩めることはできない。中国との競争に打ち勝つため、結束しなければならないとも訴える。
 米中は関係安定化を模索していたが、再び冷却化が避けられそうにない。関係の立て直しは簡単ではないが、衝突を防ぐために危機管理の在り方を整える必要性が高まる。延期したブリンケン国務長官の中国訪問をはじめ、対策を模索する動きを早期に始動させることが重要だ。
 一方でバイデン氏は、中国の習近平国家主席に「われわれが望んでいるのは衝突ではなく競争だと明確に伝えた」とも述べている。中国とはハイテク覇権などを巡り対立するが、経済活動は密接な関係が続いていることを無視できない。
 22年の輸出入を合わせた対中貿易額は過去最高を更新した。トランプ前政権下での制裁関税の応酬や新型コロナ禍で落ち込んでいたが回復した。新たな対立が経済を冷え込ませては再選戦略にも影響しかねず、硬軟の対応を重ねるしかない。
 バイデン氏はロシアに侵攻されたウクライナを支え続けると表明した。共和党は歳出拡大を強く批判し、ウクライナ支援の予算見直しを求める声がある。政策実現への与野党協力には悲観的な見方もある。共和党との向き合い方が試される。
 ロシアの侵攻は世界の試練であり、対抗する世界的な連合をつくり上げたとの認識を示した。侵攻は世界のエネルギー、食料供給にも悪影響を及ぼしている。結束した対処が必要であり、停戦へ向けた働きかけを欠かすことはできない。
 日本や欧州各国の防衛費増額方針を念頭に、同盟国との連携強化にも言及した。1月の日米首脳会談で、バイデン氏は日本の反撃能力(敵基地攻撃能力)保有決定などを称賛した。日本に新たな役割を求めることも想定される。満足な説明がないまま日本の安全保障政策が大転換することに反発も根強い。議論を深めておく必要がある。

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