2023.02.08 21:32
【動画】高知東生さんの“伝説”をたどる!涙の浦戸大橋、奇縁の高知大丸…自伝的小説「土竜」のゆかりの地巡り
初めての小説を出版し、桂浜で取材に応じる高知さん
俳優の高知東生さん(58)が先ごろ、初めての短編小説集「土竜(もぐら)」(光文社)を出版しました。昭和の高知市を舞台に、不良たちの生きざまや青春模様を描いています。
経験や記憶をベースにフィクションとして仕上げた小説で、主人公の「竜二」は自身がモデル。高知さんが実際に過ごした場所も多く登場します。5日、市内のゆかりの地を巡り、思い出を語ってもらいました。
■【浦戸大橋】涙の上京。無数のバイクに見送られ…
「仲間の見送りはうれしかったし、切なかった」と上京当時の気持ちを思い出す高知さん
まずは浦戸と種崎を結ぶ浦戸大橋。高知龍馬空港や高知新港への移動、桂浜観光などに便利な橋です。
作中では「暴力団組長の息子」とのレッテルに苦しむ主人公・竜二が上京を決意し、一人フェリーで高知を後にする場面に浦戸大橋が登場します。
浦戸大橋をくぐるフェリー(2000年撮影)
実はこのエピソード、過去の高知新聞のインタビューでも登場した実話が基になっています。
高知さんは当時の心境について「成り上がるぞ!と仲間に威勢のいいこと言って出てきたけど、本当は(親の名前が知られている)高知から逃げ出したみたいなものだった」と振り返ります。
浦戸大橋の見送りに気づいた時は号泣したと言い「本心では地元にいたいと思っていたから、さみしさと切なさがどっと押し寄せた。海に飛び込んで戻りたいと思った」と懐かしみました。
▼開通直後は大混雑!浦戸大橋の50年を振り返る連載はこちら
■【高知大丸東館】かつてキャバレーやディスコがあった場所
「ここにアメリカ広場というディスコがあった」と懐かしむ高知さん
次にご紹介するゆかりの地は、高知大丸(帯屋町1丁目)です。創業75周年を迎えた本県唯一の百貨店。昨年3月に大規模改装し、「おまちの顔」として親しまれています。
実は、高知大丸東館は高知さんに縁が深い場所。この土地には、1950~90年に掛けて県内一とたたえられたキャバレー「リラ」があり、高知さんの母親がホステスとして働いていました。
大丸東館の場所にあったキャバレー「リラ」(撮影時期不明)。作品では、若くして自死した母親の真意を知ろうと、竜二がリラ時代のホステス仲間を訪ねるシーンがある
リラの閉店後は、大型ディスコ「アメリカ広場」ができました。80年代初頭、高知さんと仲間たちはもっぱら「アメ広」に集まり、耳をつんざくようなユーロビートに合わせて踊っていたそうです。
若者がダンスに興じていた「アメリカ広場」。キャバレー「リラ」の設備をそのまま使ったため、ボックス席があるのが特徴。竜二や半沢の行きつけとして描かれる(1983年撮影)
作品には、高校を卒業した竜二の職場として、高知大丸本館も登場します。竜二は甘いマスクの人気者でエレベーターガールと付き合っていますが、高知の不良たちに名をはせる伝説の先輩・東野さんに売り上げでかないません。
この設定も実話がベース。当時の柳町でバーテンダーをしていた50代男性は「出身校は違うけど、ジョウジ君(高知さんの本名)の名は聞こえてきていた。大丸内でいろんな浮名を流し、かなり目立つ存在だった」と振り返ります。
このほか「紳士服売り場なのにジョウジ目当ての女性客で長蛇の列ができていた」「バレンタインに6~7箱のチョコが届いていた」などのエピソードが、今も伝説のように語られています。
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■【松岡かまぼこ店】孤独を癒やした大好物
大好物のごぼう天を味わう高知さん
実際に同店のじゃこ天、いも天、げそ天は高知さんの大好物で、帰省時に買って帰るそう。
実は高知さんの母親が自死した後、残された17歳の高知さんを心配して「何かあったらご飯を食べに来なさい」「困ったらうちにアルバイトしに来なさい」と声を掛けてくれたのが同店のおかみさんでした。
「同級生の実家だった縁で、母親を亡くした俺を孤独にさせるまいと気に掛けてくれた。感謝しています」と高知さん。看板娘の加茂加奈さんとも仲良しです。
自宅に持って帰るためにげそ天やごぼう天を買い求める高知さん
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■作品の舞台はほかにも…
このほかにも、作中には高知県民おなじみの場所が続々と出てきます。
※以下はフィクションのエピソードを含みます
【鏡川】
鏡川。小学1年の竜二が「親なしっ子」とからかわれ、土手をとぼとぼと歩きました。実際に高知さんが育った家も鏡川近くにありました
【城西館】
上町2丁目の城西館。竜二の実の父である暴力団組長が、竜二の祖母に身の上を打ち明けた「城東館」のモデルになりました
【市内の病院】
竜二と半沢が出会った病院で、モデルとなった親友と当時を再現(?) 作中では、2人が激しいけんかをしたため強制退院になりました
■登場人物にもモデルがいます
親友の半沢、先輩の東野さん、玉水新地で暮らす同級生の夕子など、登場人物の多くは実在の友人たちがモデルになっています。2月4日にツタヤ中万々店で開かれた「土竜」のサイン会には、モデルになった人たちを含む仲間たちが駆けつけました。
サイン会に駆けつけた仲間たち。「半沢」「東野さん」「難波」のモデルとなった人がこの中に…
薬物依存症の回復プログラムを受け、自助グループの参加などを通じて覚醒剤を断ち続けている高知さん。「土竜」を読んだ皆さまも高知さんの過去と未来に思いをはせながら県内を歩いてみてはいかがでしょうか。
(文・竹内悠理菜 写真・山下正晃)