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2023.01.05 05:00

【年初に 外交・安保】平和国家の在り方を問う

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 日本は戦後最も厳しく複雑な安保環境に直面している。政府が昨年末に決定した新たな「国家安全保障戦略」は、現状認識にこう言及した。確かに、ロシアのウクライナ侵攻や台湾を巡る情勢の不安定化は緊張感を高める。防衛の重要性に意識が向かうのは当然だろう。
 安保戦略は、インド太平洋地域で台頭する中国の軍事動向を「これまでにない最大の戦略的挑戦」と位置付け、北朝鮮は「一層重大かつ差し迫った脅威」とした。岸田文雄首相は、現在の自衛隊の能力では十分向き合えないと認識を示す。
 中国や北朝鮮はミサイル技術の高度化を図る。これに対し政府、与党は自衛目的で敵国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を打ち出した。
 持たないとした従来方針からの転換だ。迎撃中心から攻撃力重視へと移行する。国産ミサイルの射程を延ばし、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の購入、配備を目指す。
 日米同盟のもと、日本は「盾」、米国は「矛」の役割を担ってきた。憲法に基づく専守防衛の理念は空洞化が進む。首相は専守防衛は変わらないと説明し、日米同盟の基本的な役割分担も不変と主張する。
 しかし、有事に巻き込まれるリスクは高まる。危機とそれへの対処ばかりが強調されて前のめりの姿勢が際立つようでは、かえって対立を深めかねない。国際法違反の先制攻撃とみなされる危険性もはらむ。
 予算規模の先行も危惧される。一方で安定財源は定まらない。首相は「未来への責任」と国債発行を否定してきたが、一部に建設国債の活用をもくろむ。増税の方針には、自民党内からも不満が噴出する。説明と議論の不足を物語っている。
 バイデン米政権は国際秩序を脅かす国を抑え込むため、軍事だけでなく経済や情報などの力を組み合わせ、同盟・友好国と緊密に連携する「統合抑止」を掲げる。米国単独では中国や北朝鮮に対処できないとの認識からだ。
 日本は米国との統合抑止力で東アジアの脅威と向き合う。来週開く日米首脳会談では、安保関連3文書改定を踏まえた同盟深化を探るとみられる。文書は日米豪印(クアッド)や日米韓の枠組み活用、北大西洋条約機構(NATO)などとの連携強化も掲げた。こうした動きに中国が反発を強めるのは必至だ。
 対中競争が先鋭化して衝突に発展しないように、対話の重要性は一段と高まる。ロシアの侵攻の衝撃は資源や食料問題でも顕在化した。日本は中国との経済関係が強く、対立していては互いの発展は望めない。外交努力を怠ることはできない。
 日本は国連安全保障理事会の非常任理事国になった。機能不全が指摘されるだけに、改革へ向けた取り組みに関与することが求められる。
 一方、日本の針路に影響する防衛政策は国民的な理解が進まないまま変更へと動いている。近く召集される通常国会での重要な論点であり、平和国家の在り方が問われる。

高知のニュース 社説

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