2023.01.02 08:31
牧野を支えた女性たち 祖母・浪子、妻・寿衛、次女・鶴代…―ドラマティックMAKINO!
亡くなる直前の牧野博士をいたわる次女の鶴代(1957年、橋井昭六さん撮影)
〈私は幼かったから、父母の顔を覚えていない。そして、私には兄弟もなく姉妹もなく、ただ私一人のみ生まれた。つまり、孤児であったわけである〉(草木とともに 牧野富太郎自伝)
「孤児」とはずいぶんな言い方であろう。佐川町で酒造などを営む裕福な商家「岸屋」に生まれ、祖母・浪子の愛を一身に受けながら育てられた。しかし牧野自身の〈親の味というものを知らない〉という強烈な孤独感は晩年に至るまで消えることはなかった。
もちろん浪子は富太郎に「岸屋」を継がせるつもりだった。けれど孫の植物への異様な熱中を容認、時には支援もしていた。浪子自身も和歌や書などをたしなむ「趣味」を持つ文化人であった。しかし浪子のもくろみは大きく外れることになる。…